スキルアップ
2013年12月25日
滝川クリステルの「ビジュアルハンド」から学ぶ"伝える力"
[連載] 心を動かす!「伝える」技術【1】
文・荒井 好一
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もう一つ彼女から学ぶ技術は、アイコンタクト&アイコミュニケーション


 滝川さんは、大きくきれいな瞳に喜びの表情をたたえて終始スピーチを行いました。

 最初は正面を向いてTVカメラにフォーカスを合わせていました。スピーチやプレゼンテーションを行うとき、目はどこを見るかが大きな問題です。明確に見る箇所を決めないと、視線がキョロキョロと彷徨ようし、会場全体を見るというような漠然とした見方では、焦点の合った目にはなりません。

 彼女はTVキャスターとしての訓練を受けていましたから、カメラ目線で話すことができます。TVカメラを人として見据えて(カメラで撮影された映像が各家庭の受像機に送られ)視聴者一人ひとりにアイコンタクトができることを熟知しています。このプレゼンテーション会場ではTVカメラのレンズに目の焦点を合わせていました。IOCの広いプレゼンテーション会場にはいくつものカメラがあり、それぞれのカメラが会場正面の巨大なスクリーンに切り替えて映し出されるのです。

 当然リハーサル時点でカメラのある位置と方向を確認しており、映像を映し出す生のリハーサルが行われたはずで、プレゼンターは視線を向ける対象を確認して本番に臨んだのでしょう。

 滝川さんの視線は、正面だけでなく、「おもてなしの心が東京にあふれています」という映像を展開するときには、視線は左右に分かれましたが、左右の視線を合わせるポイントをきちんと捉えていました。

 おそらく前列のIOC委員に(個別の人に具体的に)視線を合わせていました。その効果で、IOC委員の一人ひとりは自分に語り掛けられていると思ったことでしよう。

 一般人の100人アンケートでは、次のような感想が寄せられました。

「『お・も・て・な・し』の説明を聞いて共感した。普段私がお客様を迎えているのも同じ気持ち。滝川クリステルさんは、仕事としてオリンピック招致のスピーチをやっているのではなく、本人が心から望んでいるのだという気持ちが伝わってきました」( 60代女性)

「日本人の気持ちを共有してくれているのが、とても嬉しかった」( 50代男性)

「言葉もきれいでジェスチャーもきれいだった。堂々としていて格好良かった」( 20代女性)

「話し方が丁寧なのに毅然としていて、まっすぐ前を見る視線が印象に残った」( 20代男性)

「日本人にも、おもてなしの素晴らしさをあらためて伝えてくれた」( 30代男性)

「フランス語だったからか、言葉の抑揚が気持ちよく、間合いの取り方が見事だった」( 40 代女性)

「知的な滝川さんが、日本の文化のことを話してくれたのが絶妙に良かった」( 30代女性)

(了)
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心を動かす!「伝える」技術
五輪招致7人のプレゼンターから学ぶ
荒井好一 著



【著者】荒井 好一(あらい よしかず)
1971年同志社大学法学部卒。総合広告会社・大広(業界4位)に38年在籍し、クリエイティブ・ディレクターとして、パナソニック、キリンビール、武田薬品などを中心に600本余りのプレゼン歴がある。クリエイティブ局長、経営企画局長を経て人事担当役員に就任し、専門教育プログラムを開発。2010年に、「一般社団法人 日本プレゼン・スピーチ能力検定協会」を設立し、理事長に就任。 新しいプレゼンテーションとスピーチの価値を開発・啓蒙すべく、日々研究を重ねている。 「目・手・声」の身体コミュニケーション機能を駆使する独自のメソッドで、「プレゼン・スピーチセミナー(全5回コース)」を、東京・永田町教室で30 期、大阪教室で5期、開催してきた。企業研修でも、みずほ総研のプレゼンテーション講座や、東京海上日動火災保険のカフェテリア研修に採用されている。企業経営者や幹部向けを含むパーソナルレッスンを60回以上実施。IT企業や技術メーカーの「伝えられる技術職」「売れる営業職」のスキル向上にも貢献し、高い評価を得ている。 著書に、『心を動かす!「伝える」技術 五輪招致7人のプレゼンターから学ぶ』(SBクリエイティブ)、『日本人はなぜスピーチを学ばないのだろう』(象の森書房)がある。
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