ビジネス
2014年1月14日
マクドナルド原田泳幸が伝えたい「成長のヒントはいつも現場にある」
[連載] バトンタッチ ~若きビジネスパーソンへ伝えたいこと【2】
文・原田泳幸(日本マクドナルド会長)
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アップルとマクドナルドの業績をV字回復させた原田泳幸氏。日本を代表する経営者が、若き自身の経験から、現代の若きビジネスパーソンへ向けて金言を送る大好評連載の第2回目。リーダーの在り方や役割、そのために20・30代でやっておくべきこと、目から鱗のビジネスヒントがここに。


お客様に怒られてこい!


原田泳幸 氏(日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO)

 優秀な人間ほど、勉強ができる人間ほど、理論だけで物事を考え、いろいろな知識を集めようとする。もちろん、その努力を一律に否定しようとは思わない。私自身、ハーバード大学のビジネススクールに通い、経営の理論を学んだ経験がある。

 その上で断言したい。徹底した現場主義なしに商売は成立しない。商売というものは、お客様の期待を上回るものを提案する必要がある。お客様について知らなければ何も提案できず、したがって商売にならない。そして、お客様の嗜好や考え方は現場に出ないと理解できないものだと私は考えている。

 私の現場主義は、日本NCR時代に培われた。特に製品やサービスに対する不満の声を生で聞くことができるクレーム処理の仕事は大いに勉強になった。また、当時の上司が何かある度に「お客様に怒られてこい!」と言って私を現場に行かせてくれたことにも感謝している。

 あるとき、自分が設計したシステムで故障が発生し、大手スーパーマーケットからクレームを受けた。大急ぎで現場に駆けつけて調べてみると、夜間に作業した工事スタッフが誤って通信ケーブルを切断したことが判明。自分の作ったシステムが原因ではないとわかった私は胸をなで下ろし、スーパーの設備担当者にこう伝えた。「今後はケーブルを切断しないよう、スタッフに注意してください」。すると担当者は怒りを露わにした。「ふざけるな! あなたの作ったものに合わせて仕事ができるか。うちの商売に合わせてシステムを作るのがあなたの仕事だろう!」。

 目が覚めるような思いがした。システムを開発しているときは、ケーブルが切断されることなどほとんど想定していなかった。しかし現場では、「たとえ切断されたとしても店の業務に支障が生じないシステム」こそを求めていたのだ。私はお客様の気持ちを理解せず、彼らが本当に求めているものを提案できていなかった。

 その後、ケーブルが断線した際にはバックアップの回線に切り替わるよう、システムを設計し直した。これがやがて特許を得る技術にまで発展する。現場に足を運んだからこそ生まれたビジネスチャンスだった。

社長自らが2週間の店舗実習で得た情報を元に立てられた戦略


 もし私が現場から離れた場所でしか仕事をしていなかったら、顧客からのクレームに四苦八苦することはなかっただろう。しかし、お客様の本音に触れ、ピンチをチャンスに変える体験を積む機会も限られてしまったはずだ。これではサラリーマンとしての成長は臨めない。だからこそ、徹底した現場主義は欠かせない。

 これは、ビジネスのあらゆる場面において言えることだろう。私はマクドナルドの社長に就任してから2週間、店舗で実習を受けた。早朝に店に入って夜遅くまで商品の搬入を行い、ビーフパティを焼き、ドリンクを準備し、レジを打った。さすがに2週間で覚え切れるものではなかったが、3カ月も経てばついていけるとわかった。

 さらに、当時、各店舗のスタッフが1年で約7割も入れ替わっていることに気づき、その中には3カ月未満で辞めていくスタッフも相当数いた。これではサービスの質を向上させることは難しく、お客様の満足度を高めることもできない。私は店舗から得た情報を元にマクドナルドを建て直すための戦略を立て、次々と実行に移していった。

 こうした戦略も、現場で実習を受けたから立てられたのである。

(第2回・了)
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バトンタッチ
若きビジネスパーソンへ伝えたいこと
原田泳幸 著



【著者】原田 泳幸(はらだ えいこう)
日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO。1948年長崎県生まれ。東海大学工学部を卒業後、日本NCR、横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェを経て、1990年にアップルコンピュータジャパンに入社。1997年に同社代表取締役社長兼米本社副社長に就任し、iMacなどの商品を日本でヒットさせる。2004年2月に日本マクドナルドに入社し、7年連続マイナス成長だった同社をV字回復に導く。