ビジネス
2014年2月24日
「できる人」はマルチタスクで仕事をしない
[連載] ワン・シング ~一点集中がもたらす驚きの効果【2】
『ワン・シング』より
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仕事の切り替えは時間をロスする


マルチタスクをこなすことは、時間の節約どころか浪費でしかない。 ※クリックすると拡大

 一つの仕事から別のことへスイッチを切り替えるときには、二つのことが起きる。まず、切り替えようと決心する。それから、これからしようとしていることの手順を踏まなければならない(図参照)。

 テレビを観ることと衣服をたたむことのような、単純な仕事の切り替えはすぐにできるし、比較的たやすい。しかし、もし表計算の最中に同僚が何かの問題を話し合おうと部屋に入ってきたら、簡単に切り替えることはできないだろう。別の仕事を始めるにも、中止した仕事を再開するにも、ある程度時間がかかるし、中止したところからきちんと再開できるという保証はない。

 ある研究によると、仕事を切り替えるために余分にかかる時間は、その仕事の複雑さによって変わるという。単純な仕事では25パーセントかそれ以下の時間の増加で済むが、複雑な仕事では100パーセントかそれ以上の増加になる。私たちは仕事の切り替えにそんな代償を払っているのだが、そのことに気づいている人はほとんどいない。

 命がかかっているようなときに複数のことをすれば、文字どおり命取りになりかねない。事実私たちは、パイロットや外科医といったプロフェッショナルが目の前の仕事に集中し、他のことは何もしないでいてくれるものと思っている。そして、その義務を怠れば厳しく追及されるのが当然と考える。言うまでもないことだと。

 ところが、別の価値基準で生きているそうは思わない人々もいる。自分自身の仕事を大事にせず、あるいは重大に考えないのだろうか? 私たちが最も重要な仕事をしているときにも、マルチタスクを認めてしまうのはなぜだろう?

 パイロットや外科医ではないからといって、集中することと成功は関係ないと考えてはいけない。私たちがすることはすべてがつながっていて、各自にそれぞれがやるべき仕事、ちゃんとやりとげなければならない職務がある。

 もし注意散漫のために就業時間の3分の1近くを失っているのなら、合計すると生涯ではどれほどの損失になるだろう? 会社全体ではどうだろうか? このままでいたら、あなたばかりでなく、悪くするとあなたの周りの人たちまでが仕事を失うようなことになるかもしれない。

 仕事に加えて私生活でも、注意散漫は私たちに手痛い代償を払わせることになる。食事の席で一方は真剣に話しかけているのに、相手はテーブルの下でメールをしているようなカップルを見るたび、私はこのことを思い出す。

★重要な考え
1.マルチタスクをこなそうとすると大きな損失を招く──自宅でも職場でも、注意散漫になると選択を誤り、取り返しのつかない過ちを犯し、不要なストレスにさらされる。
2.注意散漫になると成果を損なう──一度にあまりに多くのことをしようとすると、結局は何もできないということになりかねない。その時々で最も重要なことを見きわめ、それに専念しよう。

(第2回・了)





ワン・シング
一点集中がもたらす驚きの効果
ゲアリー・ケラー/ジェイ・パパザン 著  門田美鈴 訳



【著者】ゲアリー・ケラー
ケラー・ウィリアムズ不動産共同設立者・会長。テキサス州オースティンの一部屋で立ち上げた同社を一代で全米最大の不動産会社にまで育て上げる。現在はビジネス・コーチとしても活躍。権威あるアーンスト・アンド・ヤングの「アントレプレナー・オブ・ザ・ イヤー」にも選ばれている。「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラーを獲得した著書「The Millionair Real Estate」シリーズは、累計で130万部超を売り上げている。

【著者】ジェイ・パパザン
米大手出版社ハーパーコリンズを経て、ケラー・ウィリアムズ社出版部門の統括責任者として、ケラーの多くの著書に共同執筆者として関わっている。

【訳者】門田美鈴(かどた みすず)
翻訳家。フリーライター。 訳書に『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)、『カエルを食べてしまえ! 』『1分間顧客サービス』(ダイヤモンド社)など、多数。



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