ビジネス
2014年2月10日
マクドナルド原田泳幸が伝えたい
「情熱を伝えるコミュニケーション」
[連載] バトンタッチ ~若きビジネスパーソンへ伝えたいこと【3】
文・原田泳幸(日本マクドナルド会長)
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アップルとマクドナルドの業績をV字回復させた原田泳幸氏。日本を代表する経営者が、若き自身の経験から、現代の若きビジネスパーソンへ向けて金言を送る大好評連載の第3回目。リーダーの在り方や役割、そのために20・30代でやっておくべきこと、目から鱗のビジネスヒントがここに。


正論で動く人間はいない!


原田泳幸 氏(日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO)

 「サラリーマンたるもの、コミュニケーションが大切だ」

 この意見に異を唱える人は少ないだろう。特に、人を動かし、チームのパフォーマンスを最大化することを使命とするリーダーが、仲間とのコミュニケーションを厭うようなことがあってはならない。

 とはいえ、私もコミュニケーションには大いに苦労してきた。ひと言でいって、私は器用ではないのだ。「どんな人とも気さくに話せればいいのに」と思うのだが、ムリなのだ。昨今の若者たちと同じように、私も周囲とのコミュニケーションには悩んできた。

 今、コミュニケーションの本質とは何かと問われたら、私はこう答える。 「お互いの意見を尊重し合いながら、正しい解決に落とし込むこと。相手の心情を慮り、相手の頭ではなく、心に届く言葉を使うこと」

 しかし、こう言えるようになったのは、ごく最近である。昔は違った。30代までは頭ごなしに正論を「かます」ところがあった。正しいのは自分で、間違っているのは君だという態度である。これでは部下の心が動くはずもない。そして、自分の思い通りにならない部下を見ては、「何度言ったらわかるんだ!」「彼らはやる気がないのか?」などと不満を募らせていた。

 人をほめるのも大の苦手だ。もちろん部下が素晴らしい仕事をすれば、全力でほめる。だが、やる気をアップさせるためにほめる、おだててノセるというやり方に対して、どうしても抵抗がある。おそらく九州人の性質なのだと思うのだが......。

改革は《本気》を示すことから始まる


 シュルンベルジェで働いていた頃は、部下に厳しく、ほめ言葉の一つも言えない自分のやり方に迷い、「私は部下に厳しすぎるでしょうか?」と社長に相談したほどだ。
 それでも、リーダーの務めから逃げるわけにはいかない。自分のような人間が部下を動かすにはどうしたらいいか。

 私のやり方は愚直なものだった。言葉には頼らない。人を動かすために、まず自分が動く。部下に結果を求めるなら、まず自分が結果を出してみせる。そうして、「原田の言っていることは信じていいんだ」と思わせる。要は、ハートを掴むのである。
 2004年、私がマクドナルドの社長に就任した時もそうだった。

 当時、社員たちは「何をやってもダメだ」と諦めの境地にいた。この先に成長が待っているという期待よりも、このまま苦しみが続くのではないかといった不安のほうがはるかに大きかった。私は「全店売上高6000億円を達成する」と目標を掲げたが、実態とのギャップがあまりにも大きかったため、誰も信用してくれなかった。社員は今になって「あの頃は原田さんのことが嫌いだった」と言う。

 だからこそ、やってみせるしかなかった。最高のスピードで、ただちに目に見える結果を残す。組織変革をすると決めたら即人事異動、就任したその年から黒字転換。そうして「なるほど、原田の言った通りだ」「自分たちが進む方向は、これで正しいんだ!」と社員に信じてもらった。

 繰り返そう。人を動かし、チームのパフォーマンスを最大化するのがリーダーの務め。そのためなら、どのようなコミュニケーションの形もあり得るのだ。言葉がダメなら行動で動かす。結果で動かす。要領よく言葉を使うことだけが、コミュニケーションではないのである。

(第3回・了)
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バトンタッチ
若きビジネスパーソンへ伝えたいこと
原田泳幸 著



【著者】原田 泳幸(はらだ えいこう)
日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO。1948年長崎県生まれ。東海大学工学部を卒業後、日本NCR、横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェを経て、1990年にアップルコンピュータジャパンに入社。1997年に同社代表取締役社長兼米本社副社長に就任し、iMacなどの商品を日本でヒットさせる。2004年2月に日本マクドナルドに入社し、7年連続マイナス成長だった同社をV字回復に導く。