ビジネス
2014年2月17日
マクドナルド原田泳幸が伝えたい
「任せる勇気を持ってこそリーダー」
[連載] バトンタッチ ~若きビジネスパーソンへ伝えたいこと【4】
文・原田泳幸(日本マクドナルド会長)
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アップルとマクドナルドの業績をV字回復させた原田泳幸氏。日本を代表する経営者が、若き自身の経験から、現代の若きビジネスパーソンへ向けて金言を送る大好評連載の第4回目。リーダーの在り方や役割、そのために20・30代でやっておくべきこと、目から鱗のビジネスヒントがここに。


リーダーの役割は人を育てること


原田泳幸 氏(日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO)

 「あなたは3年以内に、どんな人材を育てるのか?」

 私はよく管理職クラスの社員たちに、そう問いかけている。その背景には、「リーダーは人を育てることが仕事だと学んでほしい」という思いがある。

 管理職はともすると「人を管理して評価するのが仕事」だと考えられがちだ。しかし、部下を管理するだけの仕事なら誰だってできる。リーダーの本当の仕事は人を育てること。そうして、チームのパフォーマンスの最大化に全力を尽くすことだ。

 問題はどのように育てるか。私の方針は「任せて育てる」。

 かつての私は「ああしろ、こうしろ」と、こと細かく指示するタイプだった。アップルにしろマクドナルドにしろ、こうした「トップダウン方式」だったからこそ急ピッチでの経営再建が実現できたとも言える。だが、これには弊害があった。「ああしろ、こうしろ」と言い続けているうちに、いつしか社員たちは私を頼り、自分の頭を使って仕事をしなくなった。

 これではまずいのである。リーダーの言うことを聞いていればいい、自分はただ上からの命令に従っていればいい。こんな自主性のない社員ばかりの組織は、リーダーの実力以上には成長できない。社長の限界と会社としての限界がイコールになってしまう。だから私は、人材育成の考え方を改めることにした。

 それが「任せて育てる」。つまり、リーダーとしての仕事を、会社のビジョンや戦略を語ることだけに留め、実行プランなどの細かいところは社員たちに任せる。部下の能力をしっかり見極めて、「適材適所」で配置していれば、大まかな指示を与えるだけで彼らは十分に活躍してくれる。最近は、そう考えるようにしている。

誰もが《後継者づくり》を避けられない


 人に任せるには勇気がいる。経験の浅い若手にできるかわからない仕事をやらせるのだから、うまくいく保証はない。うまくいかなければ、責任を取るのは自分だ。当然、自分自身の評価にも影響する。それがわかっていながら、自分は手を出さずに若手に仕事を任せる。勇気のない者にできることではない。

 しかし、任せなければならない。特に自分の「後継者」となると、任せることなしには育てようがないのである。

 そう、リーダーは後継者を育てなくてはならない。第一に会社のため。自分が去った後、組織が回らなくなるようでは、企業の永続的な成長は難しい。

 第二に、自分のためである。後継者づくりは、自分自身を成長させ、キャリアの可能性を広げることに直結する。この点について、私には苦い思い出がある。

 シュルンベルジェの営業部長だった頃、私はやればやるだけ仕事が取れた。だから、どんな仕事も自分が率先してこなした。地位も収入も順調についてきた。

 だが、次第に部下たちは私に甘えるようになった。気づいたときにはもう手遅れ。部下の仕事に足を引っ張られるかたちで、自分の評価まで落とすことになった。

 後悔はそれだけではない。シュルンベルジェのフランス本社に行くチャンスがあったのに、自分の仕事を任せられる人間がいなかったため、日本を離れられなかったのである。この悔しさは骨身に染みた。おかげで思い知った。後継者がいないと、新しい仕事に向かうことができない。逆に言えば、後継者を育て、彼らに自分のポジションを譲って初めてチャレンジが許される。

 今、部下や後輩を指導する立場にあるビジネスパーソンも、この点を肝に銘じて、日々の仕事に取り組んでほしいと思う。

(第4回・了)
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バトンタッチ
若きビジネスパーソンへ伝えたいこと
原田泳幸 著



【著者】原田 泳幸(はらだ えいこう)
日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO。1948年長崎県生まれ。東海大学工学部を卒業後、日本NCR、横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェを経て、1990年にアップルコンピュータジャパンに入社。1997年に同社代表取締役社長兼米本社副社長に就任し、iMacなどの商品を日本でヒットさせる。2004年2月に日本マクドナルドに入社し、7年連続マイナス成長だった同社をV字回復に導く。