カルチャー
2014年3月25日
ドバイの女子大学生が日本に来てビックリしたコトとは?
[連載] 住んでみた、わかった! イスラーム世界【3】
文・松原直美
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世界から年間1000万人を呼びこむ都市ドバイ。世界一の高さを誇るビル、街中どこでもつながるWi-Fiなど、先端的な近未来都市である一方で、そこに暮らす人々はイスラームの教えに忠実に生きていた! 古来からの習俗を尊重しつつ、超近代的な生活をしている奥深いイスラームの世界を、『住んでみた、わかった! イスラーム世界』の著者・松原直美が紹介します。


ホテルの部屋にお酒もあるし聖書もある!


 アラブ首長国連邦(UAE)の女子大学生10人が日本へ研修旅行に来たとき、最初のカルチャーショックは東京のホテルに着いたとたん起こりました。「ホテルの部屋の冷蔵庫にビールがあります。どうしてですか?」。仰天したUAE人女子学生が私に訴えてきました。イスラームでは飲酒が禁止されているため、厳格な家庭で育った彼女はアルコール類をほとんど目にしないで育ってきているのです。

 日本ではホテルの冷蔵庫にビールが入っていたり、ウィスキーのミニボトルなどが置いてあることが当たり前ですが、彼女にとっては当たり前ではありません。

 UAE人にはお酒を飲まないばかりか、お酒がある部屋にいることにも嫌悪感を示す人がいます。学生たちは異文化を受け入れる柔軟性があるので「お酒をすべて取り除いてください」とホテルに頼むことはありませんでしたが、翌日以降は学生たちの部屋の冷蔵庫からお酒類をすべて撤去してもらいました。

 お酒問題が解決すると、次は聖書です。ホテルの部屋の引き出しを見て学生たちは「日本にはキリスト教徒が少ないのに、なぜ聖書がホテルの部屋にあるんですか?」。イスラーム教国では、ホテルの部屋にイスラーム教の聖典クルアーン(コーラン)は備わっておらず、もちろん聖書も置いてありません。

男性店員からのお釣りの手渡しで顔を赤らめるUAE女子


『住んでみた、わかった! イスラーム世界』

 買い物時も予期せぬことが発生。日本人の店員にはレジでお釣りをわたすとき、お釣りを持っていない手を下にあてて、客の手を上下から挟み込むようにする人がいます。これは客がお釣りを落とさないように、という配慮ですが、UAE人女子は男性の店員に手を上下からあてられてびっくりしてしまいました。

 イスラームでは「女性は男性になるべく見られないように」という教えがあります。この教えに従ってUAEでは小学生になる年齢から男女が別々に分かれて過ごすようになります。

 見知らぬ男性と触れることなく育ったUAE人女子にとって、男性店員の手が自分に触れただけでも大事件なのです。顔を真っ赤にしながら「手が触れちゃった...」と言うので「店員は丁寧にお客さんに接しようとしているだけで、お客さんの手を握ろう、と考えてしているわけではないですよ」と説明しました。彼女たちも男性店員が手を挟んできたのが不快だったわけではなく、とにかくびっくりしてしまったようです。

一日五回の礼拝場所をどう確保した?


 一番困ったのが礼拝の場所と食事にまつわることでした。

 「礼拝をしたいんですけど、場所はありますか?」。日本でUAE女子学生たちに突然こう言われても私はすぐに対処できません。東京にはモスクが数ヶ所ありますが、観光地からモスクまで行くには時間がかかり、他の訪問先を削らなくてはなりません。「礼拝場所はないよ」と一言ではねのけたいところですが、そうもいきません。

 イスラーム教徒は礼拝を一日五回することになっていますが、旅行中など普段の生活と同じように行動できない場合は何回かの礼拝をまとめてすることも許されます。しかしながら敬虔な女子学生たちは、日中外出している間にも一回は礼拝をしたいようです。

 イスラーム教徒の礼拝は床に座って上体を床と平行に伸ばす動作があるので、一人でもそれなりのスペースを必要とします。しかも床がある程度きれいでなくてはなりません。

 そこで、断られるのを覚悟しながらいろいろな建物の中でこう頼みました。

 「すみません。この学生たちが礼拝をするため、10分ほど場所を貸していただけないでしょうか」。すると博物館の中、ホテルの中、訪問した会社などで、係員がこころよく場所を提供してくれました。ある博物館では、会場係の女性が重そうなついたてを運んできてくれて、礼拝中の学生たちが誰からも見えないように気配りしてくれました。他の建物では、非常階段の踊り場や人のいない部屋などを貸してくれました。
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住んでみた、わかった! イスラーム世界
目からウロコのドバイ暮らし6年間
松原直美 著



【著者】松原 直美(まつばら なおみ)
1968年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻博士後期課程退学。タイの公立高校日本語講師を経て、ドバイへ2006年に移動。UAE国立ザーイド大学にて日本語指導と空手道の初代講師として、2007年~2012年まで勤務。UAEでは茶道の振興にも携わった。現在はロンドン在住だが、UAEと日本の架け橋となるべく活動を続けている。著書に『住んでみた、わかった! イスラーム世界』がある。 ブログ「ドバイ千夜一夜」(http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428)は、2007年から連載をはじめ、もう少しで1000回を数える。