カルチャー
2014年4月16日
武士道、茶室、着物...。日本とUAEの意外な共通点とは!?
[連載] 住んでみた、わかった! イスラーム世界【5】
文・松原直美
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世界から年間1000万人を呼びこむ都市ドバイ。世界一の高さを誇るビル、街中どこでもつながるWi-Fiなど、先端的な近未来都市である一方で、そこに暮らす人々はイスラームの教えに忠実に生きていた! 古来からの習俗を尊重しつつ、超近代的な生活をしている奥深いイスラームの世界を、『住んでみた、わかった! イスラーム世界』の著者・松原直美が紹介する本連載、ついに最終回!


UAEで『武士道』や『葉隠』がバカ売れ!?


 日本人同士が挨拶している姿を見ながら、あるときアラブ首長国連邦(UAE)人女子大生のラフマさんはこう言いました。

 「日本人は挨拶を欠かさないし挨拶が丁寧だから好きです。イスラームでも『挨拶をきちんとするように』と教えているんですよ」。小さい頃から見続けてきた日本のアニメで日本人の習慣を学んだラフマさんはこう続けます。

 「日本の学校では授業のはじまりと終わりに教師と生徒が挨拶を交わすのがいいですね。UAEでは授業の挨拶はないから。それに先生のことを尊敬していない人が多い。イスラームでは目上の人を敬うべきと教えているのに...」

 近年、アラブ諸国では武士を題材とした日本のアニメやドラマを見ている若者が多くいます。「武士の主君に対する忠誠心や、部下を命をかけて守る精神に魅かれる」と日本好きのUAE人は口を揃えてその魅力を語ってくれます。

 あるとき、「武士の道徳について教えてください」と男子の日本語クラスで頼まれ、私は新渡戸稲造の『武士道』を紹介したこともありました。ショッピングモールに店を構える紀伊國屋書店ドバイ店の店員さんは「武士道に関する本、特に『葉隠(はがくれ)』の英訳版が飛ぶように売れている」と話してくれました。

イスラーム教徒より彼らの道徳を体現しているのが日本人?


 和を大切にする日本人のマナーの良さもイスラーム教徒の心に響くようです。

 「東北大震災が起こったとき、パニックに陥らず避難所で寒さや食糧難に耐えながら規則正しく暮らす日本人の姿を見たら感動して涙が出た」と震える声で語ってくれたのはドバイで働くエジプト人男性です。震災後、私は大学で毎日のようにUAE人学生をはじめいろいろな国籍の教職員から「日本人のマナーは立派だ。どんなにつらい境遇でも協調性を保っている」「自分勝手な人がいないので驚いた」「日本人の忍耐強さに打たれた」など、さまざまなコメントをもらいました。

 イスラーム教徒は自分たちが「共同体の中で神によって生かされている」ことを重要視します。日本人は彼らの目に「他人とスムーズに共生していくためのマナーをこころえて実践している人々」と映っているようです。

 「身辺を清潔に保つこと」もイスラームの重要な徳目のひとつです。ある時、アラブのテレビ局が日本特集を組んで、日本の小学校で児童が学校内を掃除している姿を映し出しました。アラブ諸国では子供たちによる掃除が行われておらず、番組司会者は、「日本人はイスラーム教徒ではないのに、イスラーム教徒よりイスラームの道徳を実践している」と驚きと賞賛をもって紹介していました。

肌も体型も隠す着物とアバーヤの共通点


 日本人の衣服についても好感を持つイスラーム教徒、特に女性はたくさんいます。

 「日本人の着物が大好き。着物は腕も足もすべて隠すから、イスラーム教徒の民族衣装に似ています。日本人はもともと慎ましやかな民族なんですね」。イスラームには「男性の眼から守るために女性は美しいところを隠すように」という教えがあるので、UAE人女性たちは10歳頃になると全身を覆う民族衣装を外出時に着るようになり、髪の毛をスカーフで覆います。

 一方、日本人女性は着物を着るときに体型を筒型がなるよう補正するので、手足だけでなく体型も隠します。「肌も体型も隠す」というアラブの民族衣装アバーヤと着物の思わぬ共通点をUAE人女性は指摘してくれました。
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住んでみた、わかった! イスラーム世界
目からウロコのドバイ暮らし6年間
松原直美 著



【著者】松原 直美(まつばら なおみ)
1968年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻博士後期課程退学。タイの公立高校日本語講師を経て、ドバイへ2006年に移動。UAE国立ザーイド大学にて日本語指導と空手道の初代講師として、2007年~2012年まで勤務。UAEでは茶道の振興にも携わった。現在はロンドン在住だが、UAEと日本の架け橋となるべく活動を続けている。著書に『住んでみた、わかった! イスラーム世界』がある。 ブログ「ドバイ千夜一夜」(http://blogs.yahoo.co.jp/dubai1428)は、2007年から連載をはじめ、もう少しで1000回を数える。