ビジネス
2014年5月29日
「移民政策」は労働人口減少の特効薬になるのか
[連載] 日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか【3】
文・山田順
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日本は、長引く経済の低迷によって、世界での存在感を失ってきたが、そこにつけ込むように始まった中・韓の反日キャンペーン。いったい、私たちはどうすればいいのだろうか? グレンデールの慰安婦像、ロスのリトルトーキョーの崩壊などの現場を歩いたジャーナリスト・山田順の著書『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』から、世界市場での日本製品・日本ブランドの失墜の原因と打開策を探る大好評連載の第3回目!


外国人比率がたった4%の国際都市


 21世紀は、都市の時代と言われている。国連の統計によれば、現在、世界人口の半数が、都市部に集中している。この都市への人口集中はますます進み、2050年には世界人口(推定92億人)の約3分の2が都市部に住むようになるという。そして、21世紀の都市は、そこに住む人間の多様性によって発展する。インターナショナルシティほど、ダイナミックに発展していくという。

 とすれば、現在、世界最大の都市圏、人口約3400万人の東京メトロポリタンエリアがインターナショナルでないことは、日本の発展を大きく阻害する。東京を歩いてがっかりするのは、あまりに外国人が少ないことだ。

 人種のるつぼと言われるニューヨーク、ロンドンなどは当然として、いまアジアの大都市もみな国際都市化している。たとえば、上海の新天地、香港のランカイフォン、シンガポールのクラークキーなどのオープンカフェで、世界各国の若者たちがグラスを傾けているのを見ると、東京にはそういう光景が少ないことにがっかりする。

 そこで、シンガポールと東京を比べてみると、人口約531万人、広さは東京23区をやや上回る程度のこの都市に、現在、約185万人の外国人が暮らしている。

 この10年間で、シンガポールの人口は1.6倍に増えた。しかし、シンガポール国民の人口は1.2倍しか増えていない。つまり、増加した人口のほとんどは外国人である。シンガポールの人口の内訳を見ると、シンガポール国民が約65%、外国人が約35%である。

 そこで、この割合を東京都(人口約1323万人)に当てはめてみると、外国人人口は約463万人となる。しかし実際には、東京の外国人居住者は約39万人(比率約3%、23区内にかぎると4%)にすぎない。

 この外国人比率は、世界のほかの都市と比べても異様に低い。たとえば、ロンドンの人口は約820万人だが、2011年時点で、外国人居住比率は50%を超えている。世界の人口100万人以上の主な都市の外国人居住比率を見ると、低いところでも10%ほどであり、高いところとなると、たとえば、ニューヨーク34%、香港43%、トロント45%、ドバイにいたっては83%となっている。

 この点だけから言うと、東京は国際都市ではなく"鎖国都市"である。

「鎖国」を続けると韓国に負ける可能性も!


 こういう話になると、「それは移民を受け入れろということですね」と聞かれるが、そのとおりだ。もはや、人口減、高齢化が進むこの国では、日本人だけでは経済発展はほとんど不可能だからだ。これを食い止め、日本を復活させる、もっとも有効な方法が、世界から移民を受け入れ日本人になってもらうことだと思う。

 移民を受け入れることだけで、インターナショナル化ができるとは言わないが、もう少し、東京に長くいたい、あるいはここで暮らしたいという外国人を増やすべきだろう。そのためには、移民法をつくり、長期滞在ビザ、投資家ビザ、リタイアメントビザなどの制度を整備すべきだ。中国人富裕層はあまりに移住しすぎたため、カナダなどから拒否されようとしている、ならば、資産を持って日本に来てもらい、東京の高級住宅地に住んでどんどんおカネを使ってもらったらどうか。東京には、中国の汚染大都市にはない青い空ときれいな水がある。

 現在、日本の労働人口に占める外国人比率は約1%である。これに対して、アメリカ約15%、ドイツ約8%、イギリス約6%、フランス約5%となっている。日本と同じように1%と低いのは、お隣の韓国ぐらいである。

 しかし、この韓国はすでに移民受け入れに転じている。このことが将来、日本にどんな影響をもたらすかは未知数だが、悲観論から言うと、日本が欲しい高度人材を奪われ、韓国の後塵を拝すということもないとは言えない。

 韓国では、日本と同じような少子高齢化で2016年から労働人口が減少に転じ、人口オーナス期に入る。これに危機感を抱いた盧武鉉大統領(当時)は、2006年、外国人労働者の労働環境の改善を呼びかけ、移民の人権を重視する新基本政策を打ち出した。この時点で、韓国では、外国人労働者を「一時的労働者」から「隣人」という呼び方に改めた。韓国の外国人労働者はほぼアジア諸国出身で、経済発展して韓国の若者が嫌うようになった、いわゆる「3K仕事」に就いた。この点は、日本と同じだ。

 しかし、移民政策はどんどん変更され、2007年に「在韓外国人処遇基本法」、2008年に「多文化家族支援法」が制定されると、今度は国際結婚が劇的に増えた。とくに農村部にベトナムやカンボジアなどからの女性がやって来て、韓国人男性と結婚するようになった。こうしていまでは、現在の韓国の国際結婚比率は、なんと10組に1組にまでになった。2011年には国籍法が改正され、それによって条件付きで複数国籍が認められるようになった。この結果、2000年に49万人にすぎなかった外国人居住者(90日以上の滞在者)は、2012年には146万人(全人口の2・8%)と急増している。

 以上が韓国の移民政策の経過だが、いまのところはまだ永住者を確保するためではなく、短期の単純労働力の確保に重点が置かれている。つまり、外国人の合法的な定住化が進んでいるわけではない。しかし、この先はどうなるかわからない。近い将来、韓国は、日本のネトウヨが誹謗する国とは、違う国になっているかもしれない。

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日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか
山田順 著



【著者】山田順(やまだ じゅん)
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社 ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に、『出版大崩壊』、『資産フライト』、『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』(いずれも文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『新聞出版 絶望未来』(東洋経済新報社)、翻訳書に『ロシアン・ゴットファーザー』(リム出版)など。近著に、『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本』(PHP 研究所)、『税務署が隠したい増税の正体』(文春新書)、『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(SB新書)がある。