カルチャー
2014年6月3日
大腸がんは10年前の食事で決まる
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【1】
辨野義己
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10年前の食事が、今の腸年齢を決めている!


 今や「大腸はあらゆる病気の発生源」といわれています。また、「あらゆる病気の原因は大腸に棲む腸内細菌」ともいわれています。人間の臓器のなかで病気の種類が一番多いのも大腸です。

 このことから、「健康や病気、若さや寿命をも決定づけているのが大腸」といっても過言ではありません。最近では「大腸は第一の脳」といわれるほど、大腸やそこに棲む腸内細菌の重要性が注目されています。

 免疫細胞の約70%が腸に集中していることから考えても、人間にとって腸は大切な臓器です。当然、腸内環境が悪くなって善玉菌が減り、悪玉菌が増えると免疫力は低下します。悪玉菌がつくりだす有害物質が大腸の腸壁を傷めたり、大腸から吸収されて血流に乗り、時間をかけて身体を蝕んだりするのです。

 とくに50歳を過ぎた頃から、いろんな病気にかかりやすくなるのは、腸が老化して腸内環境が悪化することで、腸内細菌のパターンが悪いほうへと大きく変わるからです。免疫力も20歳をピークに下降していき、40代後半では、ピーク時の3分の1ほどにまで落ちてしまいます。

 なかでも大腸がんの増加は深刻で、自覚症状が出たときにはすでに末期状態、といったことがめずらしくありません。気づかないうちに進行していき、命を脅かされてしまうのです。まさに腸にダマされた! という状態です。

 若い人も安心していられません。実年齢は若いのに、腸年齢だけが老化している人が急増しているからです。実際、腸年齢が実年齢プラス20歳以上の人は、少なくありません。なかには実年齢プラス50歳くらいの人もいます。

 つまり、若くして40~50代と同じようなリスクを抱えている人が、たくさんいるのです。まさかここまでひどいことには......と信じられない人もいるでしょうが、この点でも、腸にダマされているのです。これは若い人ほど、腸内環境を悪化させる原因となる動物性脂肪が多く、食物繊維が少ない食事を好む傾向があるからです。

 とくに大腸がんの場合、罹患するかどうかは「10年前の食事が決定づける」といわれています。また、「10年前の食事が、今の腸年齢を決めている」ともいえます。

 たとえば、20~30代で動物性脂肪が多く、食物繊維が少ない食事を続けていると、10年後の30~40代になって、大腸がんになるリスクがグッと高まります。このリスクは大腸がん以外の病気でも同じです。

 つまり、「今日の食事が10年後の腸をつくっている」といえるのです。言い換えれば、「腸は10年もの歳月をかけて私たちをダマす」のです。このように大腸に送り込まれた食べかすによって、老化の促進・抑制が大きく左右されてしまうのです。

 日本人の平均寿命は男性が79.94歳、女性が86.41歳で、世界でも有数の長寿国です。ところが、若い人の腸内環境を見ていると、このままでは近い将来、平均寿命60歳の時代が到来しても、なんらおかしくはない、と思わずにはいられません。






腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



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