カルチャー
2014年6月3日
大腸がんは10年前の食事で決まる
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【1】
辨野義己
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便秘は病気! 動物で便秘になるのは人間だけ


 食べたものがウンチとなって排泄されるまでにかかる時間は、人間の場合、だいたい12~48時間です。3日以上排便がない症状を便秘といいますが、便秘になる人はめずらしくないため、便秘は病気でない、と思っている人は少なくありません。

 2011年に行われた、ヒミツ結社デルツマールの「こくみん腸査」(広告主ヤクルト)によると、もっとも便秘になるのは20代の女性で、2人に1人が該当します。30代以上の女性でも、3人に1人は便秘という結果が出ています。

 10代の女性でも、30%ちょっとの人が便秘です。男性でもっとも便秘になる40代でも、20%を少し超えるくらいなので、いかに女性に便秘が多いのかがわかるでしょう。なかでも子供の頃から便秘の女性の場合、改善しようがない、とあきらめている人さえいます。

 さらにこれらの女性の3人に2人は、5日も便秘が続く深刻な状態です。まったく排便できないため、土日に下剤を飲んで出す、週末トイレ症候群になっている女性も少なくありません。

 水と野菜とヨーグルトを摂り、便秘を改善しようとする女性もいますが、それでもダメな場合は、下剤に頼る人がほとんどです。

 ところが下剤は常習化すると飲む量が増えていき、知らぬ間に1瓶飲まなければ排便できない、といったことになりかねません。この点において腸はバカなので、ウンチがたまるS状結腸がどんどん膨らんで伸びてしまい、さらに便秘がひどくなってしまいます。

 便秘が続くと腸内環境が悪くなり、いろんな病気にかかるリスクが高まります。便秘の人が多いため、危機感を持っていない人は少なくありませんが、そもそも便秘は病気、と考えるべきなのです。便秘なんて深刻に考える必要はない、と思っている人は、腸にダマされているのです。

 便秘の主な原因は、偏った食事や、排便するときに必要な筋肉であるインナーマッスル(大腰筋、腸骨筋)の筋力低下、ストレスですので、これらを改善する必要があります。

 動物のなかで便秘になるのは人間だけ、ということを考えても、便秘は大腸の異常事態です。動物の場合、なかなか排便できないことは死を意味します。排便は臭いも残すことになりますから、早く出して早く逃げなければ、敵にやられてしまうのです。

 人間はこのような目に遭うことはありませんが、だからといって便秘を改善しないでいると、思わぬ病気を招いてしまうことになりかねません。

(第1回・了)





腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



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