カルチャー
2014年6月11日
サラリーマンに深刻な過敏性腸症候群
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【2】
辨野義己
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テレビや雑誌などで「うんち博士」として知られる、腸や便の研究の第一人者である辨野義己 先生の著書『腸をダマせば身体はよくなる』から、腸と上手に付き合っていく方法を紹介する連載。第2回目は、過敏性腸症候群について解説します。


「男性はくだる、女性はたまる」の現代人


 前回、「便秘は女性に多い」と書きましたが、男性に多いのは下痢です。ヒミツ結社デルツマールの「こくみん腸査」によると、もっとも下痢になるのは40代の男性で、40%近くもいます。20代、30代、50代以上の世代でも、3人に1人は下痢という結果が出ています。10代でも30%を少し超える人が該当します。

 女性でもっとも下痢になる40代でも、20%ちょっとしか当てはまらないことを考えると、「男性はくだる、女性はたまる」が、現代人のおなかの問題といえるでしょう。便秘同様、下痢になる人はめずらしくないため、下痢は病気ではない、と思っている人は少なくありませんが、腸にダマされてはいけません。改善する必要があります。

 では、下痢はどうして起こるのでしょうか?
 主な原因は、ストレスと偏った食事です。

 もっとも下痢になる40代の男性は、自殺率が高い世代でもあります。上司から突かれ、部下から突き上げられ、帰宅しても妻から怒られ、行き場のない人もめずらしくはありません。このようなストレス世代の男性の腸内環境がかなり悪くなっていても、なんら不思議ではないのです。

 くだるといえば、近年大きな問題となっているのが過敏性腸症候群です。

 精神的なストレスが原因と考えられ、腸が過敏に収縮し、排便異常が起こる病気です。20~40代に多く、「サラリーマンがかかりやすい病気」ともいわれており、病院で検査をしても腸に疾患が見つからないのも、この病気の大きな特徴です。

 症状としては、たとえば通勤電車に乗ると便意を催し、トイレに行きたくなったりします。重症になると、1駅ごとにトイレに駆け込まなければならないため、〝各駅停車症候群〟とも呼ばれています。通勤電車は大丈夫でも、会議では何度もトイレに行きたくなる、という人もいます。

 これらのことからもわかるように、症状がもっとも出やすいのは、すぐにトイレに行けない状況です。「トイレに行きたくなったらどうしよう」という不安が自律神経を乱すため、何度もトイレに行きたくなるのです。なかにはこのような下痢が何日か続いた後、ひどい便秘になる人もいます。

 欧米など、先進国に多い病気で、日本でも潜在的な患者を合わせると、人口の10~15%もいる、と考えられています。近年、突発性の下痢に水なしで飲めてすぐに効く下痢止め市販薬「ストッパ」(ライオン)がヒット商品になったことからも、この病気の深刻さがうかがえるでしょう。

 過敏性腸症候群の主な原因は精神的なストレスと考えられていますが、この症状で悩む人のなかには、動物性脂肪の多い食事やお酒を好む人も少なくありません。

 このような人の腸内は悪玉菌が優勢であることが多く、そこにストレスが加われば、ますます善玉菌が減って腸内環境が悪くなります。ひいては大腸の粘膜が傷つき、大腸が痙攣を起こしてしまいます。こうなっては水分の吸収がうまくいかなくなるため、腹痛や下痢になりやすくなります。つまり、ストレスを軽減するだけでなく、食生活にも気を配り、腸内環境を改善するよう心がける必要があるのです。

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腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。