カルチャー
2014年6月24日
あなたの腸内細菌は母親から受け継いだもの!
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【3】
辨野義己
  • はてなブックマークに追加

テレビや雑誌などで「うんち博士」として知られる、腸や便の研究の第一人者である辨野義己 先生の著書『腸をダマせば身体はよくなる』から、腸と上手に付き合っていく方法を紹介する連載。第3回目は、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌について解説します。


腸内を発酵させる「善玉菌」、腐敗させる「悪玉菌」


 前に「あらゆる病気の原因は大腸に棲む腸内細菌」と書きました。腸内細菌には善玉菌や悪玉菌、日和見菌がおり、善玉菌が優勢だと腸内環境がよくなり、悪玉菌が優勢だと腸内環境が悪くなります。このことについては、知っている人も多いでしょう。けれども、善玉菌や悪玉菌のメカニズムについて、知っている人はあまりいないのではないでしょうか。

 大腸では、送り込まれた食べかすによって、善玉菌が優勢になると発酵が起こり、悪玉菌が優勢になると腐敗が起こります。もう少し詳しく説明すると、糖類を分解して乳酸やアルコールなどをつくる(発酵させる)細菌が善玉菌で、たんぱく質やアミノ酸などを分解し、硫化水素やアンモニアなど、有害な物質をつくる(腐敗させる)細菌が悪玉菌なのです。前者はビフィズス菌や乳酸菌が代表格で、後者は肉食を好む人のウンチによく見られる、ウェルシュ菌やフラジリス菌などがよく知られています。

 納豆やヨーグルトなどの発酵食品が身体にいいのはこのためです。腸内で腐敗したものが身体にとって有害なのはいうまでもありません。ちなみに日和見菌とは、培養が困難なため性質がよくわかっていない未知の細菌のことをいいます。

 悪玉菌が優勢だと、腐敗によって発生した有害物質が、大腸の腸壁を傷めたり、大腸から吸収されて血流に乗り身体じゅうを駆け巡ったりするため、さまざまな病気を引き起こす原因となります。このため、「大腸はあらゆる病気の発生源」といわれているのです。

 逆に、善玉菌が優勢だと病気になりにくく、老化を抑制することができます。「大腸はあらゆる健康の発信源」ともいえるのです。大腸に送り込む食べかすによって、腸内細菌が健康や病気、若さや寿命をも左右するのです。

 ただし、腸内環境によっては、善玉菌でも悪い働きをすることがあり、悪玉菌でもいい働きをすることがあります。たとえば、善玉菌の代表格、ビフィズス菌も例外ではありません。善玉菌、悪玉菌という表現は、あくまでも腸内細菌についてわかりやすくするためのもので、科学的には正確な表現ではないのです。

 たしかにビフィズス菌は、ほかの腸内細菌に比べてあまり悪さはせず、健康維持・増進に効果的な働きをしています。たとえば、便秘の予防や改善、免疫力の維持作用、酢酸を大量に産生することによる腸管感染症の予防、花粉症やアトピー症状の改善などの働きが認められてきました。その一方で、ビフィズス菌は大腸の発がんに関与するといわれている二次胆汁酸の産生にも寄与しているのです。






腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



  • はてなブックマークに追加