カルチャー
2014年7月3日
流す前にチェック! ウンチこそ最良の健康診断
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【4】
辨野義己
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いいウンチ、悪いウンチって何?


 いいウンチ、悪いウンチについての話をする前に、まずはウンチがどのような成分でできているのかについて説明しておきます。

 正常なウンチは、水分が約80%も占めています。残りの20%に当たる固形成分は、小腸や大腸などから新陳代謝によってはがれた腸粘膜、腸内細菌、食べかすがそれぞれ6~7%となっています。ウンチの大半は食べかす、と思っている人は少なくありませんが、実は10%にも満たないのです。なかでも、いいウンチ、悪いウンチを決定づけているのが腸内細菌なのです。

 私たちの身体のなかには、たくさんの細菌が棲息していますが、大腸だけでも、その重量は1~1.5キログラムにも達します。これらの腸内細菌の一部が、ウンチと一緒に出てくるのです。腸内細菌は肉眼では見えない微生物ですので、その個体数は少量でも膨大な数となります。たとえば、ウンチ1グラムのなかには、6000億~1兆個もの細菌が含まれており、腸内に棲む細菌は1000種類以上にもなります。

 ウンチに含まれる水分についてもう少し説明すると、水分含有率が80%の正常なウンチなら、息むことなくストーンストーンと気持ちよく出ます。便器に落ちたときに水中でプカプカと浮き、水で流すとパッと散るのも特徴です。

 これが85%になると緩いヒョロヒョロのウンチに、90%以上になると泥状の下痢になります。逆に、70%に満たないとカチカチのウンチになり、便秘になることもあります。練り歯磨き以上、バナナ以下の硬さが、いいウンチの硬さの目安といえます。

 ウンチの量ですが、1日に200~300グラム出るのが理想です。大きさでいうと、バナナ2~3本くらいになります。一度、自分がどのくらいの量のウンチをしているのか、計ってみるといいでしょう。排便前後の体重を比べることで、大まかな重さを知ることができます。

 このとき、尿の重さを引くことを忘れてはなりません。だいたい1回当たり300グラムくらいの尿が出ますので、排便後に約500~600グラムの体重が減っていれば、200~300グラムのウンチが出ていることになります。

 いいウンチ、悪いウンチの色や臭いについてですが、まずいいウンチの色は、黄色か黄褐色です。腸内が弱酸性に保たれているため、ビフィズス菌が優勢になっています。この色づけを決めているのが、脂肪の分解・吸収に使われる胆汁です。

 肉などの脂質の多いものを食べるほど胆汁も多く出るため、ウンチの色が黒っぽくなります。黒っぽいウンチが出るのは腸内がアルカリ性に傾き、悪玉菌が優勢になっている証拠です。つまり、悪いウンチほど黒っぽいのです。

 肉などの脂質が多い食事を摂っていないのに、黒色のウンチが出たら要注意です。胃や十二指腸などで出血している可能性があります。また、白っぽいウンチにも注意が必要です。胆道閉鎖などで胆汁の分泌量が減るとウンチが着色されず、白っぽくなるからです。

 次にウンチの臭いですが、いいウンチほどひどく臭うということはありません。これはビフィズス菌が食べかすを発酵させるため、漬け物のような発酵臭になるからです。典型的なのが母乳で育つ乳児のウンチの臭いです。酸っぱい発酵臭がしますが、これは乳児の腸内にビフィズス菌がたくさん棲んでいるからです。まさに乳児のウンチが理想といえるのです。逆に、悪いウンチの臭いは、悪玉菌が食べかすを腐敗させるため、強い腐敗臭がします。

 このようにウンチから腸内細菌はもちろん、腸内環境の状態もわかるのです。腸にダマされないためにも、流す前にチェックする習慣をつけてください。






腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



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