カルチャー
2014年7月28日
肥満も腸内細菌に左右されている!
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【6】
辨野義己
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テレビや雑誌などで「うんち博士」として知られる、腸や便の研究の第一人者である辨野義己 先生の著書『腸をダマせば身体はよくなる』から、腸と上手に付き合っていく方法を紹介する連載。最終回となる今回は、肥満と腸の関係について解説します。


人は無菌状態だと120歳まで生きられる!?


 体内に微生物がいない無菌動物の寿命は、通常動物のそれと比べると、なんと1・5倍も長くなります。単純に比較することはできませんが、人間に当てはめると寿命が80歳としたら、120歳まで生きられることになるのです。

 このことから、腸内細菌が寿命を縮めている、と考えられます。ところが、無菌動物は体内微生物がいない状態で維持されていますが、いったん細菌を投与されると、またたく間に腸内細菌の世界をつくりだすのです。

 また、無菌動物では腸内細菌がつくりだすビタミンKが体内にないのも致命的です。怪我をしても出血が止まりにくく、傷口も治りにくいことも認められています。

 人間の場合、平均寿命からわかるように、女性のほうが男性よりも長生きです。長年連れ添った夫婦を見ても、夫が先立っても長生きする妻はめずらしくありません。ところが、妻に先立たれた夫で、3年以内に亡くなる人は少なくないみたいです。女性のほうが、精神的なストレスに強い人が多いのかもしれません。

 ところが、無菌動物の場合、体内微生物がいないことによる代謝異常や内分泌産生異常のために、オスのほうがメスよりも長生きします。また、無菌動物の腸の厚さは通常動物に比べて薄いのです。これは、腸内細菌が腸粘膜の構造に大きな影響を及ぼすからです。

 通常動物と無菌動物では糞便の状態も違います。通常動物は固形便なのに対し、無菌動物は軟便気味です。糞便をつくることや水分吸収に関しても、腸内細菌は重要な役割を果たしていると考えられます。

 発病についての実験でも、通常動物と無菌動物では差が見られます。

 発がん物質を含んだエサを通常動物に与えると、大腸がんや肝臓がん、腎臓がんになるのですが、無菌動物に同じエサを与えても、がんができないのです。

 このことから、腸内細菌が発がんに大きく関与していることがわかったのです。

 人間を含む哺乳類の小腸には、免疫担当細胞の約50%が集中しており、「小腸は最大の免疫器官」といわれています。ところが、無菌動物の小腸は小さくて腸壁の繊毛も細く、腸管の細胞も少ないのです。このため、菌が棲息する普通の環境だと、感染症などの病気で死にやすいのです。

 このように、無菌動物は無菌の環境だと通常動物の1.5倍も長生きする、ということは「腸内細菌が寿命を決めている!」のです。普通の環境だと、感染などによる短命化や免疫異常と密接に関係している腸内細菌の存在が大きな影響を与えているのです。

 普通の環境で健康に長生きするには、いかに腸内細菌のバランスを整え、腸内環境をよくしなければならないかが、理解していただけたかと思います。

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腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。