カルチャー
2014年7月28日
肥満も腸内細菌に左右されている!
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【6】
辨野義己
  • はてなブックマークに追加

ビフィズス菌が多過ぎると腸内環境が悪くなる!?


 ビフィズス菌は善玉菌の代表格ですが、多ければ多いほどいい、というわけではありません。ビフィズス菌が多過ぎると、腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪くなるからです。実際、ビフィズス菌の割合が少しくらい少なくても、ほかの腸内細菌のバランスがよければ、まずまずの腸内環境といえるのです。

 このことを痛感したのは、『主治医が見つかる診療所』というテレビ番組でお笑い芸人の中川家の兄、中川剛さんの腸内細菌のバランスを調べたときでした。

 理想的な腸内細菌のバランスは、肥満型(ファーミキューテス類)50%、やせ型(バクテロイデス類)40%、ビフィズス菌5%、その他の菌5%なのですが、中川さんの場合、肥満型63.2%、やせ型7.9%、ビフィズス菌28%、その他の菌0.9%だったのです。やせ型の菌が少な過ぎてバランスがものすごく悪いのに、ビフィズス菌が異常なまでに多い、今までに見たことがない腸内細菌のバランスでした。

 それでも、多過ぎるのが善玉菌の代表格、ビフィズス菌ならいいのでは? と思う人も多いかもしれませんが、ダマされてはいけません。腸内環境によっては、ビフィズス菌も悪玉菌のように、悪い働きをすることがあるからです。

 番組では中川剛さんのほかに、お笑い芸人のコント赤信号のリーダー、渡辺正行さん、女優の沢田亜矢子さん、中川家の弟、中川礼二さんの腸内細菌を調べました。中川剛さんのビフィズス菌の割合が、ほかのだれよりも圧倒的に多かったのですが、あまりものバランスの悪さから、評価を最下位にしたくらいです。このように腸内細菌はビフィズス菌の割合より、バランスのほうが大事なのです。

 中川剛さんの腸内細菌のバランスからすると、やせ型の菌とその他の菌が抑制されているため、ビフィズス菌が異常なまでに増えているように見えますが、実はビフィズス菌自体の数は増えておらず、抑制された菌が多過ぎるため、あたかも増えたかのように見えたのかもしれません。

 それとも、本当にビフィズス菌が増えているのだとしたら、これまでのように、健康や若さを保つには、単にビフィズス菌を増やせばいい、という考え方は間違っているのかもしれません。これは肥満型の菌ややせ型の菌の大半が、性質がよくわからない未知の菌、日和見菌だからです。これらの菌の性質が解明されれば、今までとはまったく違った概念で、腸内細菌を考えなければならないことが出てきても不思議ではないのです。

 たとえば、ビフィズス菌を増やすことよりも、ビフィズス菌よりも圧倒的に数が多い肥満型の菌ややせ型の菌のバランスが安定しているほうが、腸内環境としてはいい、ということも十分に考えられるのです。また、肥満型の菌ややせ型の菌のバランスを安定させる大きな役割を担っているのが、ビフィズス菌とも考えられるのです。

 中川剛さんの場合、1日に2回ウンチは出ているものの、これまでに4回も膵炎になったことから、異常なまでに腸内細菌のバランスが悪い主な原因は、食生活の乱れにあるのでは、と考えられます。

 これまで6回にわたり連載してきましたが、いかがでしたでしょうか?
 腸が健康な人は心身ともに状態よく、生活習慣病などにもかかりにくいことがおわかりいただけたと思います。
 腸の賢さを知り、腸とのだまし合いでぜひ健康につなげてみてください。

(了)





腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



  • はてなブックマークに追加