ビジネス
2014年7月3日
一瞬で儲かっている会社を見破る方法――国税調査官だけのヒミツの決算書速解術(1)
[連載] 一瞬で決算書を読む方法【5】
文・大村大次郎
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国税調査官は実は会計の知識がそんなにないにもかかわらず、会社の数字の嘘を瞬時に見抜いています。そのスキルは知識や時間のないビジネスパーソンにうってつけのものといえるでしょう。本連載では、元国税調査官で新書累計70万部のベストセラー作家・大村大次郎の最新刊『一瞬で決算書を読む方法』から、「あまり勉強せずに会社の業績を読めるようにしたい…」「会社が公表する決算書に騙されたくない…」人向けに、決算書を読むツボを紹介していきます。


決算書は必ず「流れ」を見るべし


 「もう少し具体的に『一瞬で決算書を読む方法』を教えてほしい」。

 これまでの連載はお陰さまで好評を博し、そのような読者の声が多く寄せられた。

 今回からは、決算書から本当に儲かっている会社を見抜くための、具体的なテクニックをご紹介していきたい。

 一般の人は、国税調査官のように、会社の事務所に立ち入ったり、銀行で資産調査をしたりするわけにはいかない。だから、決算書から、企業の真実を読み解かなくてはならない。

 しかし、決算書からだけでも、ちょっとしたコツを覚えれば、企業の本質がかなり見えてくる。

 国税調査官は、最初は決算書だけを見て儲かっている企業をピックアップする。国税調査官は、粉飾決算の企業に調査に行くわけにはいかないので、粉飾決算については、殊更に注意する。

 そのため、国税調査官は、粉飾決算を素早く見抜く能力を身につけているのだ。

 また、国税調査官は、高度な会計知識を持っているわけではない。簿記2~3級程度の会計知識で、粉飾決算を見抜いているのである。

 その国税調査官の決算書を読み解くコツを、ここでご紹介していこう。

 まず、念頭に置いていただきたいのは、決算書を見るときに、一番大事なのは、1年分の決算書だけを見てもダメということである。

 1年分の決算書だけを見て、この企業は儲かっているとか、損しているとか、そういうことは絶対にわからない。企業というのは、必ず決算書に化粧しているものである。だから、1年1年の決算書を見ても、矛盾は絶対に生じないようにできているのだ。

 利益率などの各種の分析をする場合も、それだけを見てもあまり意味がない。たとえば、1年分の利益率を見ると、かなりいい線をいっている。

 では、この企業は景気がいいと言えるのか?

 企業によっては、故意に利益率を良く見せかけている恐れもある。だから、1年分の決算書だけではわからない。

 しかし、決算書を数年分比較してみると、その会社が嘘をついていた場合は、会計の矛盾があぶり出されてくるのだ。

 企業が決算書に何らかの細工をした場合、どこかの勘定科目が異常に増減する。たとえば、売上を水増しして粉飾している場合は、売掛金が急に膨れ上がる。

 また、経費を除外した粉飾をしているときには、在庫が急に増えることがある。利益率が急に増減している場合にも、何か細工をしている可能性がある。

 だから、数年分の決算書を比較し、急に増減している勘定科目がないかどうかをチェックするのだ。

 何度も言うが、決算書というものは、1年分だけを見たら、全く矛盾がないように作られている。しかし、細工をしている決算書は、数年分を比較してみれば、どこかに異常値が出てくるものなのだ。

 決算書の真偽を確かめるときには、それが最も手っ取り早い方法なのである。

「売上」「利益」「販売管理費」だけで儲かっている企業は見抜ける!


 ここから、儲かっている会社を簡単に見抜くための基本的なスキルをご紹介したい。

 ここで使う勘定科目は、「売上」「利益」「販売管理費」だけである。

 「売上」「利益」「販売管理費」という勘定科目は、企業会計の超基本的なものであり、会計を知らない人でも、何となく内容に想像がつくものだろう。

 「売上」は、その企業がモノやサービスを売った金額の合計のことである。
 「利益」は、売上から経費を差し引いた残額である。
 「販売管理費」は、仕入れなどではなく、会社の事務や人件費など、総合的に使われた経費のことである。

 この3つの科目を見るだけで、企業の本質のかなりの部分を見抜くことができるのだ。

 決算書の嘘を見抜く方法として、基本中の基本は、損益計算書の「売上」と「利益」を見ることである。

 決算書の嘘というのは、実はそのほとんどが「利益」に反映されていると言ってもいい。というより、企業が数字をいじるのは利益を動かしたいがためなのである。

 そして、この「利益」の嘘は、「売上」と「販売管理費」を比較することで、浮かび上がってくるものなのだ。

(第5回・了)
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一瞬で決算書を読む方法
税務署員だけのヒミツの速解術
大村大次郎 著



【著者】大村 大次郎(おおむら おおじろう)
大阪府出身。元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、フジテレビ「マルサ!!」の監修など幅広く活躍中。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』『税務署員だけのヒミツの節税術』(以上、中公新書ラクレ)、『税務署が嫌がる「税金0円」の裏ワザ』(双葉新書)、『無税生活』(ベスト新書)、『決算書の9割は嘘である』(幻冬舎新書)、『税金の抜け穴』(角川oneテーマ21)など多数。最新著書は『一瞬で決算書を読む方法』(SB新書)