ビジネス
2014年7月9日
世界第二位の都市圏となったジャカルタで、IT事業を成功させるには?
[連載] ジャカルタで働く社長のコラム【1】
文・中村 けん牛/協力・吉政 忠志
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1. 日本の強みを現地にローカライズする


 日本での強みというのは、すでにブランドやサービス、仕組みがあるのであれば徹底してそれを使うということです。また、日本で強みを作ってきた仕組みや考え方そのものを活かすということです。たとえば弊社では、以下になります。

A)WordPressという世界の約60%のシェアを持つCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用した、日本トップクラスのWeb構築ノウハウとマーケティング力
B)アジアで2社しかない米国Automattic社Code Poetディレクトリ掲載のWordPressコンサルタント企業
C)日本で3万部販売した『WordPressの教科書』シリーズの執筆ノウハウとブランド

 これらすべてをインドネシアの再進出時にローカライズして展開しています。日本のソフトウェア開発品質は世界トップクラスであり、海外で高くされるノウハウです。ソフトウェア開発、書籍執筆、マーケティング、販売などをインドネシア法人の社員と日本法人の社員が共同で行うことで、確実なローカライズを実現できます。これにより日本で提供している高品質なサービスをインドネシアでも提供できるようになります。

 ただ、文化や慣習が違う国で実際にビジネスを進めようとすると、さまざまな問題が起こるはずです。これらを解決するいちばんの方法は、事前シミュレーションであると考えています。実際にビジネスを展開する国に足を運んで現地の責任者と何回もシミュレートすることが、成功の確率を上げます。事業をスタートしてしまうと、家賃、人件費など、時間がたつだけでお金が流れ出てしまいます。事業をスタートする前にどれだけ課題を想定し、進められるかで、成功の可能性は高まっていきます。海外に何度も足を運ぶのは大変ではありますが、その準備こそが将来の自分を助けると思って、海外進出をお考えの方はぜひ実行していただきたいです。

2. ブランディングとポジショニング


 私たちが起業したばかりのころは、ブランドがないことが大きな悩みでした。しかし、インドネシアでは日本資本の外国法人であるということだけでも実は大きなブランドです。それだけで、話を聞いてくれ、決定してくれる確率がかなり上がります。ブランドがなければ実質的に門前払いになるでしょう。仮に話を聞いてくれても、その先の競合とのコンペに勝てないと、売上が上がりません。

 ちなみに、インドネシアで無名でも、日本での会社規模が大きかったりブランドが確固としているのであれば、それをインドネシアのお客様にしっかりと伝えるべきです。Webサイトでも対面営業時でもそうです。しっかり説明すれば理解してくれます。インドネシアではそれぐらい日本のブランド力が高いのです。

 ちなみに弊社は、マーケティングでいう「ポジショニング戦略」を日本とインドネシアの両方で徹底して行っています。インドネシアでは「インドネシア唯一のWordPressコンサルタント企業」、東京では「東京唯一のWordPressコンサルタント企業」です。WordPressは世界のWebサイトの約22%で利用されている大きなシェアを持つソフトウェアです。このソフトウェアに関しては誰にも負けない、No.1であるということが最大のブランドであり、ポジショニングです。実際にこのポジショニング戦略で、テレビ朝日やマイクロソフト、東京大学、Adobe Systems、JAXA、Bank Negara Indonesiaなど、国内外の有力法人から多くの受注を獲得しています。

3. スーツ


 インドネシアは常夏の国です。それゆえに現地人も現地の日本人も多くはラフな格好でビジネスをします。しかしながら上下スーツ+ネクタイで訪問することで、通常は入れないような場所にも通されやすくなります。そしてなんと言っても、初対面の印象が上がり、信頼されやすくなります。それにより受注する確率がかなり違ってきます。日本に比べてブランド志向が強いインドネシアでのビジネスにおいては、信頼が重要であり、スーツは重要なコミュニケーションツールとして役に立ちます。また、スーツで活動していくこともブランディング戦略の一環でもあります。

 いかがでしょうか? 東南アジア、とくにインドネシアへの事業進出を考えている方は、ぜひご参考にしていただければと考えます。今回書けなかった、実際の現場で起きていることなどは、以下のブログでも紹介しています。興味がある方はご覧ください。

●ジャカルタで働く社長のブログ
http://blog.prime-strategy.co.jp/

(第1回・了)


【著者】中村 けん牛
プライム・ストラテジー株式会社 代表取締役。早稲田大学法学部卒、会計士補。大手証券会社を経て、2002年、プライム・ストラテジー株式会社設立。2005年、ジャカルタにプライム・ストラテジー・インドネシアを設立して以来9年間、ジャカルタでのITビジネスに携わる。執筆した書籍『WordPressの教科書』シリーズは日本、韓国で累計3万部突破のベストセラーに。2014年秋にはインドネシアの大手コンパス・グラメディアグループよりインドネシア語で『WordPress Text Book』(仮題)を出版予定。

【協力】吉政 忠志
プライム・ストラテジー株式会社 マーケティングアドバイザー。吉政創成株式会社 代表取締役





本格ビジネスサイトを作りながら学ぶ WordPressの教科書2
スマートフォン対応サイト編
プライム・ストラテジー株式会社 著



【著者】プライム・ストラテジー株式会社
東京都千代田区およびインドネシア・ジャカルタにおいてWeb インテグレーションサービス事業を展開。米国Automattic社「Code Poet」に登録されたWordPressコンサルタント。おもにWordPressによる法人向けWebサイトの構築、システム開発、サーバー構築、サポート/保守などを行う。
http://www.prime-strategy.co.jp/
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