カルチャー
2014年7月30日
知らないと損する年金リテラシー
~誰も教えてくれない年金の常識と保険料納付の節約術
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【2】
監修・浜田裕也
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日本の年金制度は、フリーランスや自営業者に厳しいという現実


 前回、フリーランスや自営業者は、老後のお金について一番自己防衛が必要な人たちだということを述べました。

 それは、会社員や公務員ならば、3階建ての年金制度のうち2階(厚生年金)もしくは3階(企業年金)までの年金を将来もらえますが、自営業者は何もしなければ1階部分(国民年金)の年金しかもらえないからです。

 具体的には、会社員(22歳~60歳まで在職、平均年収400万円)が合計で月に14万1000円の年金を受給するのに比べ、自営業者(厚生年金に加入したことがないものとする)がもらえる額は6万4400円です(2014年4月現在の制度による。金額はあくまで目安です)。

 こう考えると、日本の公的年金は「会社員とその専業主婦という昔からの標準世帯」を中心的な対象とした制度設計になっているため、フリーランスや自営業者のことはあまり考慮されていないと言ってもいいくらいのように思います。自分で何かプラスアルファの防衛策を考えないと、本当に厳しい老後になってしまいます。

「会社員だが、国民年金の保険料を払ったことがない。大丈夫?」という質問がなぜ生まれるか


 年間1000件以上受けている年金にまつわる相談のうち、頻出の相談内容を前回挙げましたが、その中に「会社員だが、国民年金の保険料を払ったことがない。大丈夫?」という質問が多くあります。

 これはとても基礎的な内容ですが、意外と保険料支払いの自覚がない人たちも多いことを示しているという意味で盲点です。会社員で国民年金の保険料を払っていないということは原則ありえません。

 というのも会社員は、毎月の給料から年金の保険料が天引きされていますから、年金に加入している実感があまりわかないかもしれませんが、入社した日から会社員は第2号被保険者として公的年金に加入しているからです。

 給与明細を見ると、控除欄のなかに「厚生年金」という項目があると思います。しかし、「国民年金」という項目はありません。このため、支払っていないのではという錯覚をしてしまうのだと思われます。

 会社員は制度上、第2号被保険者に分類されますが、第2号被保険者は厚生年金に加入すると同時に国民年金にも加入しています。そして、毎月天引きされている厚生年金保険料から国民年金の保険料が支払われていることになっています。

 ですから、会社員は公的年金に限っては、厚生年金保険料以外に保険料を支払う必要はありません。

 ここで、厚生年金について簡単に説明しておきましょう。厚生年金は公的年金のひとつで、常時1人以上の社員がいる法人企業は加入が義務付けられています。

 つまり、正社員として株式会社や有限会社に入社すれば、厚生年金に加入することになります。厚生年金の保険料はその人の収入によって変わってきます。収入が多い人ほど保険料は高くなりますが、そのぶん将来もらえる年金額が増えます。また、保険料の半分は会社が支払ってくれます。将来の年金は、会社が支払ったぶんも換算した金額になるので、会社員にとってはお得な制度といえます。

 また、厚生年金は国民年金よりも、障害年金や遺族年金について優遇されます。たとえば、国民年金の障害年金だと障害等級2級までしか支払われませんが、厚生年金は3級でも障害年金を受け取れます。遺族年金も、国民年金の場合、年金法上の子どもがいない配偶者は受け取れませんが、厚生年金なら子どもがいなくても受け取れます。






転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。
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