カルチャー
2014年8月12日
知らないと損する年金リテラシー
~低年金者の実態と生活保護
[連載] 知らないと損する年金リテラシー【3】
監修・浜田裕也
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 年金の事例のお話をする場合、「夫がずっと会社員で妻は専業主婦」というようなものがよく取り上げられています。このようなケースでは「年金生活に入ったら上手に節約しましょう。そうすれば年金収入だけでも何とか生活はできますよ」というお話に帰結することが多いと思います。

 しかし、一方で公的年金の収入だけではてもじゃないですが生活費を賄いきれないという方々も現実にはいらっしゃいます。私の受けてきた相談の中にも、残念なことですが、そのようなお話は数多くあります。そこで、今回は老齢年金が少なくなってしまうような事例をいくつかご紹介したいと思います。

自営業者は収入の浮き沈みが激しい分、未納期間が生じがち


 自営業の方の場合、公的年金は国民年金のみになります。なお、平成26年度の国民年金(本当は老齢基礎年金といいます)は満額で月額6万4400円です。厚生年金にまったく加入したことがない方が月額6万4400円の満額の国民年金をもらおうとすると、国民年金の保険料を未納も免除もすることなく40年間きっちり納め続けなければなりません。

 しかし、自営業の方の収入は景気の影響を大きく受けますし、上下動が激しいですから、いつも満額の国民年金保険料を納めることができるとは限りません。未納や免除の期間がどうしてもできてしまいます。したがって、ずっと自営業をしてきた方が満額の国民年金を受け取れるというのは稀なケースになってしまうと言えそうです。

 私が受けたご高齢の相談者の中には、「収入が落ち込んでいる間は国民年金がずっと未納状態だった」という方がいました。その方は国民年金の免除制度があることを知らなかったため「悪いとは思いつつ、生活が厳しかったので国民年金の保険料を納めてこなかった。免除制度を知っていれば手続きをしていたのに...」と悔やまれていました。今でこそテレビや書籍、インターネットなどのメディアで知る機会は増えてきましたが、当時はなかなかそこまで知る機会がなかったのでしょう。非常に残念なことです。

妻に遺族年金が出ないといったケースもある


 老齢年金のお話に戻りますが、仮に夫婦がずっと自営業でそれぞれ満額の国民年金がもらえたとすると、夫婦合計で月額12万8800円になります(平成26年度の場合)。夫婦ふたりで月額約13万円の収入では生活は厳しくなるでしょうが、貯金があれば年金で不足する部分を貯金から取り崩していけば何とかなるかもしれません。また、自営業ですから定年を気にすることなく仕事をすればその分の収入が見込めます。

 しかし、実際の相談現場では「自営業の収入はギリギリだったので今まで貯金はほとんど出来ませんでした。仕事をするといってもいつまでもできません」という話が多かったです。

自営業の方の場合、配偶者が亡くなってしまうとさらに厳しい現実が待っています。以下でその例を挙げてみようと思います。

・夫 70歳 国民年金のみ 月額約6万4400円
・妻 68歳 国民年金のみ 月額約6万4400円(※子どもは成人しているものとする)

 夫婦で月額約13万円の収入。今までは夫婦の年金で何とか生活をすることができました。しかし。夫が亡くなってしまったら、その後の妻の年金はどうなるでしょう。残念ながらこのケースでは妻に遺族年金(本当は遺族基礎年金といいいます)は出ません。つまり、夫が亡くなった後、妻は自分の国民年金のみ(月額6万4400円)で生活をしていかなければならないのです。なお、遺族基礎年金がもらえる条件は「子のある配偶者または子」となっていますが、ここでいう「子」とは高校卒業するまでの子(厳密には18歳を迎えた最初の3月31日までの子。障がいを持つ子の場合は20歳まで)をいいます。したがって、上記のようなケースでは、夫婦合わせてもただでさえ年金の収入が厳しいのに、配偶者が亡くなることによってさらにその生活が厳しくなってしまうのです。

 さて、ここまではずっと自営業のみだった方(国民年金のみ加入の方)のケースを見てきましたが、ずっと自営業をしてきた方というは最近では珍しい話だと思います。やはり現実として多いのは、厚生年金と国民年金が混在している場合だと思いますので、以下ではそのケースも見ていくことにしましょう。

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転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話
浜田裕也 監修



【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。