カルチャー
2014年9月16日
40歳の時に「ちょい太り」のほうが長生きしやすい
[連載] 「いい人」をやめると病気にならない【6】
文・帯津良一
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メタボ健診の数値は気にするな


 健康に気をつけている人で、メタボを知らない人はいないでしょう。そのくらい、メタボという言葉はたった数年間で定着しました。

 2008年にスタートしたメタボ健診では、40歳以上の人で、腹囲が男性で85センチ、女性で90センチを超えると肥満と判定されてしまいます。このなかから、さらに血圧やコレステロールなどが基準値より高い人は、医療機関へ誘導されます。

 これは、病気の早期発見・早期治療で重症化するのを防ぐためですが、数値だけを見て、メタボの烙印を押していくのはおかしいと思います。病気のハードルを下げ、健康不安をあおって、治療対象者を増やしているにすぎない、と思えてなりません。
 実際、メタボの基準値はだれがどうやって決めたのか、なぜその数値なのか、よくわからないところがたくさんあるのです。

 たとえば、コレステロールと血圧の基準値は、ここ20年ほどの間に30ポイントも下がりました。基準値を下げる明確な説明もなしに、です。
 いたずらに、これらの基準値を下げることで治療が必要となると、かえって病気になる危険性が出てきます。

 たとえば、薬で血液中のコレステロールを無理やり下げると、免疫細胞の働きが低下し、新しい免疫細胞をつくるのが難しくなってしまいます。血圧を下げるために降圧剤を常用すると、脳出血は予防できますが、血液の流れが悪くなるため、脳梗塞が発生しやすくなります。
 これでは製薬会社を儲けさせるためのメタボ健診、といっても過言ではありません。

 かつては、コレステロール、血圧、尿酸が高いのは、働き者の象徴でした。もちろん、高すぎるのはいけませんが、少々数値が高いほうが元気に働くことができるのです。最近では、血圧やコレステロール、中性脂肪、BМI(肥満度)が少し高めの人のほうが長生きする、という報告が、複数の医療関係者から出ているくらいです。

 そのため、メタボ健診で高い数値があることを気にしている人がいれば、「ちょいメタであれば、気にしなくてもいいですよ。私なんかもっと高い数値ですよ」と言って、自分の数値を披露することにしています。すると、みなさん笑顔になります。

 ちなみに私の数値は、腹囲は約100センチ、BМIは28・5、血圧は140/90、総コレステロールは232、HDLコレステロールは59、中性脂肪は385、HbAlcは5.5となっています。

 つまり、HDLコレステロールとHbAlcのほかは、すべてメタボの基準値を超えているのです。しかし、このくらいの数値なら、気にすることはないのです。
 神経質になって数値を下げようとすると、それがかえってストレスとなり、余計に数値を上げてしまうことになりかねないのです。

メタボ健診は不健康になるための健診!?


 中高年男性の2人に1人がメタボ予備軍と言われています。
 そのため、肥満は健康の大敵と考える人は少なくありません。いい人ほど、この傾向が強いものです。これは、メタボになると心臓病や脳卒中のリスクが高くなる、と言われているからです。

 ところが、血圧や総コレステロール、中性脂肪、BМI(肥満度)は、メタボの基準とされる数値よりも少し高めのほうが長生きする、という報告が、複数の医療関係者から提出されたのです。これらを総合した数値は、次のとおりです。

 ・総コレステロール 240~250mg/dl
 ・最高血圧 140~160mmHg
 ・中性脂肪 150~300mg/dl
 ・BМI 25~29

 国が調査した結果でも、ちょい太りのほうが長生きする、というデータがあります。
 2009年、厚生労働省から発表された、宮城県の40歳以上の住民約5万人を対象に12年間行われた「体型別の平均余命」の結果でも、最も平均余命が長かったのは、40歳の時点で「太り気味」だった人なのです。ちなみに一番早死にしているのが「やせ」で、「肥満」の人と比べても、4~5歳も寿命が短いことがわかりました。

 つまり、メタボ健診は、一番元気な太り気味の人たちを「病人」か「病人予備軍」に分類していたのです。投薬でコレステロールや血圧を基準値まで下げられていた人が多かったことを考えると、メタボ健診の罪は大きい、と言わざるを得ません。

 これらのことがあってか、2014年4月には、日本人間ドック学会のメタボの基準とされる要注意の数値が次のように緩和されました。

 ・総コレステロール 200~259mg/dl
 ・最高血圧 130~159mmHg
 ・中性脂肪 150~399mg/dl
 ・BМI 18.5~24.9

 ただ、太りすぎは心臓病や脳卒中、糖尿病のリスクが高くなるのは事実ですので、治療が必要となることがあります。
 病気を未然に防ぐための医学は必要で、大きな効果を上げることもありますが、メタボ健診の場合、下手をすれば、不健康になるための健診、寿命を縮めるための健診、といっても過言ではないのです。

(第6回・了)





「いい人」をやめると病気にならない
帯津良一 著



【著者】帯津良一(おびつりょういち)
1936年埼玉県生まれ。医学博士。1961年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設、院長となる。現在、同病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック主宰。人間を「有機的総合体」と捉え、西洋医学のみならず伝統医学・民間療法等を体系的に組み合わせて患者自身の自然治癒力を引き出す、「ホリスティック医学」を実践する。全国での講演回数も多く、「長生きにはトキメキが大事」と心・食・気の養生を勧め、聴衆の人気を博している。 現在、日本ホリスティック医学協会理事長、日本ホメオパシー医学会理事長、埼玉大学講師、上海中医薬大学客員教授なども務める。著書に『長生きしたければ朝3時に起きなさい』(海竜社)、『ホリスティック医学入門』(角川oneテーマ21)、共著に『なぜ「粗食」が体にいいのか』(幕内秀夫との共著、三笠書房)、『健康問答』(五木寛之との共著、平凡社)など多数ある。近著は『人生に必要なものは、実は驚くほど少ない』(共著:やましたひでこ、集英社)、『「いい人」をやめると病気にならない』(SB新書)。
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