スキルアップ
2014年9月17日
漫画『カイジ』から学ぶ「絶体絶命のピンチに陥らない極意」
[連載] ゲーム理論で身につける、勝つための駆け引きの極意【1】
文・安部徹也
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望む結果を得るためには駆け引きが重要


 誰しも自分が望む結果を出したいと思うのは当然のことでしょう。たとえば、営業担当者であれば掲げた売上目標を、マラソンランナーであれば事前に想定した順位を達成すべく、一生懸命努力するはずです。ただ、目標達成にライバルとの競争が絡めば、自分が望む結果を得ることはそう簡単ではありません。結果を出すためには、少なからず"駆け引き"が重要な役割を果たすのです。もし、駆け引きすることなく、正直に努力するだけでは、駆け引き上手の相手に出し抜かれ、見るも無残な結果に終わってしまうことも十分に考えられます。

 このコラムでは、4回にわたってゲーム理論に基づく駆け引きのテクニックをお伝えしていきます。第1回目は漫画『カイジ』から学ぶ「絶体絶命のピンチに陥らない極意」をお届けしていくことにしましょう。

相手を信用して駆け引きせずに絶体絶命のピンチに陥ったカイジ


 漫画『賭博黙示録 カイジ』の主人公、伊藤カイジはかつてバイト先で知り合った古畑の借金30万円の保証人を引き受けます。ところが、古畑は借金を1円たりとも返済することなく蒸発。取り立て屋の遠藤は、カイジに利息を含めた385万円の返済を迫ります。もちろん、定職にも就かずに自堕落な生活を送っていたカイジにそのような大金を返済できる当てがあるはずもありません。そこで遠藤は、カイジに一晩で借金がチャラになる方法を持ち掛けます。それが、大型客船で繰り広げられる一夜限りのギャンブルだったのです。

 船上で行われるギャンブルは"限定じゃんけん"。

 乗船した者には、グー、チョキ、パーのカードが4枚ずつと星形のバッジ3つが渡されます。このカードを使って相手とじゃんけんし、勝てば賭けた星がもらえ、負ければ自分の星を渡さなければならないというシンプルなルールのギャンブルです。そして、手持ちの12枚のカードを使い切った時に、星が3つ以上であれば勝者となり、これまでの借金を帳消しにして船を降りることができるのです。

 一方で3つの星を全て失ってしまったり、4時間の制限時間が終了した時点で、星が2つ以下であったり、たとえ星が3つ以上でもカードを使い切ることができなかったりすれば、借金は加算され、返済のために自由を奪われ強制労働に従事しなければならなくなります。まさに夜が明ける頃には、乗船した者は天国と地獄にわかれてしまうのです。

 船の大広間で、みな緊張の面持ちの中、主催者の説明が終わると、いよいよ限定じゃんけんが始まります。当初は、ギャンブルの様子を伺っているカイジですが、そんな最中に一人の男が声を掛けてきます。

 男の名は船井。

 船井は、以前にも参加したことのあるリピーターだと自己紹介します。彼は前回参加した経験から、短時間で借金をチャラにできると、カイジとの共闘を持ち掛けます。2人が同じカードを順番に出していき、全て「あいこ」にしてカードを消化すれば、星が動くこともなく、あっというまに勝者として船を降りられると力説するのです。

 このまたとない提案にカイジは応じ、船井との勝負のテーブルにつきます。当初は順調にあいこでカードを消化していましたが、異変は10戦目に起きます。カイジは予定通りグーのカードを出したものの、船井のカードはパーで星を奪われてしまったのです。船井は間違ったカードを出してしまったと謝り、次の勝負でグーを出すことを伝え、わざと負けて帳尻を合わせると弁明。ところが、次の勝負ではカイジが出したパーに対して、船井が出したカードはチョキ・・・・またしてもカイジは大事な星を奪われてしまったのです。

 もちろん、この勝負は船井にとっては計算づく。最初からカイジを騙して星2つを奪い取ろうという魂胆だったのです。まんまと船井の罠にはまったカイジは、残すところカード1枚、星1つという絶体絶命のピンチに陥ってしまったのです。

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「やられたら、やり返す」は、なぜ最強の戦略なのか
ゲーム理論で読み解く“駆け引き”の極意
安部徹也 著



【著者】安部徹也(あべ てつや)
株式会社MBA Solution代表取締役。1990年九州大学経済学部を卒業後、現三井住友銀行入行。退職後、インターナショナルビジネス分野で全米No.1のビジネススクールThunderbirdにてMBAを取得し、経営コンサルティング及びビジネス教育を主業とする株式会社MBA Solutionを設立。代表に就任し、現在に至る。2003年から主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』では2万6千人以上のビジネスパーソンが参加しMBA理論を学んでいる。主な著書に『最強の「ビジネス理論」集中講義』(日本実業出版社)、『超入門コトラーの「マーケティング・マネジメント」』(かんき出版)などがある。『ワールド・ビジネス・サテライト』(テレビ東京)を始めとした多くのニュース番組出演を始め、日本経済新聞、週刊ダイヤモンドなどのビジネス系メディアにも登場多数。現在は、一般社団法人日本MBA協会の代表理事としても、一人でも多くのビジネスパーソンにMBA理論を普及させるべく日々奔走している。近著は『「やられたら、やり返す」は、なぜ最強の戦略なのか』(SBクリエイティブ)