カルチャー
2014年9月18日
こっそり公開! 不動産セールストークのカラクリ
[連載] 不動産を買うなら五輪の後にしなさい【4】
文・萩原 岳
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百戦錬磨の不動産業者がその気になれば......


 マイホームを購入する時に感じる不安とはどんなものがあるでしょうか。住宅ローンという長期の借金をきちんと返せるかどうか、購入した物件が欠陥住宅だったらどうしよう、実際に住んでみたら思ったよりも環境が悪かった、など数えだしたらきりがありません。しかし、何よりも怖いのは、「不動産業者に騙されたらどうしよう」ではないでしょうか。本来味方であるはずの不動産業者が、実は自分たちを騙して儲けようとしていたら......考えただけでも不安で仕方ありません。

 世の中の多くの不動産業者は善良ですが、中にはいわゆる「悪徳不動産屋」や、そこまでいかなくとも不誠実な業者というものは存在します。問題なのは、善良な業者と不誠実な業者との見分け方が難しいということです。悪徳業者が善人の皮をかぶることもありますし、信頼できる業者が強面だったりすることも珍しくありません。

 インターネットが発達し、簡単に情報が得られるようにはなりましたが、それでもプロである不動産業者が持つ情報とは正確性や早さ、深さなどが圧倒的に劣ります。誰でも簡単に得られる情報というものは、当然不動産業者も得ているものですし、相手はプロである以上、それを上回る情報を持っているのが常です。

 また、一般の方が不動産を売買する機会なんて一生に1度か2度のことですが、それに対して相手は1日に何人もの顧客を相手にして、月に何件も取引を成立させています。それも、昨日や今日始めたわけではありませんから、累計すれば何百、何千という数の取引を経験しています。

 たまに、「不動産を勉強するために宅建を取ったから大丈夫」という方がいますが、宅建の知識はあくまで机上で得られるものに過ぎないですし、素人に毛が生えた程度が最も危険であるともいえます。百戦錬磨の不動産業者がその気になれば、あなたを騙して儲けることなど赤子の手をひねるようなものです。

不動産購入は失敗できない戦い


 不動産業者に悪気はなく、むしろお客さん側の知識不足で損をすることもあります。例えば、「住んでみたら予想と違っていた」と嘆く声を聞くことがありますが、話を掘り下げてみると、「なんでそんなことぐらい事前に自分で調べなかったのか」と疑問に思ってしまうケースなどです。

 ネットや書籍で情報武装したものの、適切に使いこなせず、結局失敗してしまう、ということが少なくありません。賃貸ならともかく、購入でそれをやってしまうと取り返しがつきません。パンフレットや業者の言うことを鵜呑みにするのではなく、自分で物件の取扱説明書を作るくらいの気持ちで調べてみましょう。

 なお、自分では手におえないという場合は、有料で物件の調査だけ請け負う業者も存在しますので、第三者のプロを利用してみるのも有効です。

セールストークの攻め方パターンを理解しておく


 不動産会社の営業マンは不動産のプロであることに違いはありませんが、厳密に言えば「不動産を売る」プロです。マイホームは生涯で最も大きな買い物ですから、売る側は必死です。あの手この手を使って購入者の財布を開かせようとします。その代表的なものがセールストークです。一見公平なアドバイスに聞こえますが、その実は消費者心理を巧みに操るために練られたセールストークであることが少なくありません。

 マイホームを買う理由としては「家族のため」がメインのようです。自分が欲しいというよりも、家族の喜ぶ顔が見たいからという気持ちが強いのでしょう。とはいえ高い買い物です。ただでさえ、物を買うことに罪悪感さえ覚えるこのご時世ですから、「家族のため」という大義名分があるからといって、おいそれと買えるものではありません。

 そこで、不動産業者は買い物の罪悪感を取り除くため、「今買ったら得ですよ」という囁きをします。「今買えば単にお金が出ていくだけじゃなく、後で買うよりも割安なんだから、逆にこれは節約になるんだ」と思わせたいのです。「家族のため」という感情面からだけでなく、「お得だ」という経済面からも購入意欲を刺激する策です。

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不動産を買うなら五輪の後にしなさい
不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ
萩原 岳 著



萩原 岳(はぎわら がく)
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。