ビジネス
2014年9月30日
インドネシアに見るITビジネスの将来像(その1)
[連載] ジャカルタで働く社長のコラム【2】
文・中村 けん牛/協力・吉政 忠志
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 日本では長らくシステムインテグレーターという事業がIT業界の中心に存在していました。そのシステムインテグレーターという事業自体が今後長く続かないということは、多くの人が想像できるようになりました。Javaという大人数を要する開発言語で大がかりなシステムを作るのではなく、少人数・短時間で開発できる手法やソリューションがはやっています。Javaのエンジニアさえ育成し確保しておけば売り上げが伸びる、という時代は終わりをとげたのです。米国のJavaの求人数は前年比30%のマイナス成長になり(Indeed 2014年7月集計)、今後の縮小が見えてきています。日本でもシステムインテグレーターは資本提携や吸収合併を繰り返し、小舟が沈む前に大きな船に乗り移るのを競っているかのようにも見えます。

 システムインテグレーターの生き残る道は、自社サービスや自社製品で成功することと言われています。日本ではクラウドに代表されるような技術をサービスとして利用する流れが本格化しています。このように近年、企業がソフトウェアやシステムを所有せず、外部のリソースを利用することが注目されています。この流れは、インドネシアをはじめとする東南アジアでも同様に見られます。日本ではオーダーメイドビジネスであるシステムインテグレーターの時代からITが普及しましたが、東南アジアではシステムインテグレーターの時代を飛び越し、クラウドを利用した自社サービス展開から入っているようです。

 インドネシアの多くのIT関連企業は、Webサービスを構築し、自社サービスを提供しています。自社サービスを提供しているとはいえ、それらは海外の技術です。言い換えれば、海外の製品や技術を仕入れ、付加価値をつけ、サービスとして提供しているのです。このモデルはうまくいけばそれなりによいビジネスになります。しかし、外部企業への技術的な依存にはリスクが伴います。また、オリジナルの技術を持つわけではないので、莫大な利益が出ることもありません。利益が最も出るのは、「オリジナルの技術を持ち、その技術で成功する」に尽きます。

 自社でオリジナルの技術を持つIT企業の時価総額がどれくらいか、皆様ご存じでしょうか? 次のような大手有名IT企業は、自社のコアコンピタンスに存在する技術を自社で所有しています。以下は、2014年6月時点のIT企業の時価総額ランキングトップ5企業です(※単位は10億ドル)。

1位 アップル 560.3
2位 Google 394.4
3位 マイクロソフト 344.5
4位 IBM 183.5
5位 サムスン電子 183.3
※出典:「世界時価総額ランキング」

 上の企業名を聞き、おのおのでオリジナルの製品や技術をイメージできるはずです。
 前述の通り、オリジナルの製品や技術を用いたビジネスは、成功すれば莫大な利益を生み出します。世界のトップ5のIT企業でなくても、株式上場している企業の多くが、オリジナルの製品や技術を持っていることは自ずから明らかです。

 この莫大な利益を生み出す可能性を秘めたオリジナルの製品や技術を、なぜ、すべてのIT企業が開発し、ビジネスの手段としないのでしょうか? それは、仮に売れなかった場合、会社の存続を脅かすほどの膨大な赤字を生み出すリスクをはらむからです。
 オリジナルの製品や技術の開発はいわば先行投資です。開発中は給与などの開発費用を払い続け、売上が回収できるのは製品が開発できてからおおよそ3年後と言われています。それゆえにオリジナルの製品や技術でビジネスをする企業が少ないのです。
 やはり、餅は餅屋。先行している成功企業には一日の長どころか、10年も20年もの差があります。大きなギャンブルに乗り出し、先行者がいる市場で自社製品を世に出すよりも、確実にビジネスが成り立つ方を選ぶ経営者が多いのです。これは、日本もインドネシアも同じです。






本格ビジネスサイトを作りながら学ぶ WordPressの教科書2
スマートフォン対応サイト編
プライム・ストラテジー株式会社 著



【著者】中村 けん牛
プライム・ストラテジー株式会社 代表取締役。
早稲田大学法学部卒、会計士補。大手証券会社を経て、2002年、プライム・ストラテジー株式会社設立。2005年、ジャカルタにプライム・ストラテジー・インドネシアを設立して以来9年間、ジャカルタでのITビジネスに携わる。執筆した書籍『WordPressの教科書』シリーズは日本、韓国で累計3万部突破のベストセラーに。2014年秋にはインドネシアの大手コンパス・グラメディアグループよりインドネシア語で『WordPress Text Book』(仮題)を出版予定。

プライム・ストラテジー株式会社
http://www.prime-strategy.co.jp/


【協力】吉政 忠志
プライム・ストラテジー株式会社 マーケティングアドバイザー
吉政創成株式会社 代表取締役
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