ビジネス
2014年9月30日
心理学の巨人アドラーと経営学の巨人ドラッカーの意外な共通点!
[連載] アドラー 一歩踏み出す勇気【3】
文・中野 明
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アドラーとドラッカー――2大巨人の共通点


 19世紀が生んだ3大心理学者の一人でアドラー心理学の創始者であるアルフレッド・アドラーと、皆さんもよくご存知の経営学者ピーター・ドラッカーは、専門とした領域が全く異なります。
 しかし意外や意外、2人にはいくつもの共通点が見られます。

 前回もふれたように、アドラーは1870(明治3)年にオーストリア・ハンガリー帝国首都ウィーン近くのルドルフスハイムに生まれました。そして医者から精神科医となり、1929年にアメリカに移住してのちにアメリカ国籍を取得します。

 一方、「マネジメントを発明した男」とも呼ばれるドラッカーは1909年の生まれです。アドラーとの歳の差は39歳で親子以上に年が離れています。
 ただしドラッカーの生まれは、アドラーと同じくオーストリア・ハンガリー帝国で場所はウィーンでした。

 またドラッカーは、ドイツやイギリスで証券アナリストや新聞記者などの職に就いたあと(新聞記者時代にはヒトラーにもインタビューしている)、アドラーに遅れること8年の1937年にアメリカに移住し、やはりのちにアメリカ国籍を取得します。ちなみに翌38年にはナチスドイツがオーストリアを併合しています。

 このようにアドラーとドラッカーはともにオースリア・ハンガリー帝国生まれ、またともにアメリカに帰化したという共通点を持ちます。また学問分野は異なるものの、アメリカを代表する学者になったのも2人の共通点と言えるでしょう。

「目標」を重視したアドラーとドラッカー


 もっとも生まれた国やアメリカへの帰化だけが2人の共通点だとしたら、本稿に掲載する価値は決して高いとは言えないでしょう。
 実はアドラーとドラッカーは思想的にも共通点があります。しかもその結びつきは非常に固いと筆者は考えています。
 以下、その点について見ましょう。

 アドラーは人が持つ目標に着目し、人は目標に向かって生きるという、このシンプルな考えをベースにして人間の行動や心理を理解しようとしました。これはアドラー心理学の基本的な態度とも言えるものです。

 この態度を一言で表現するならば「その人の目標を知らなければ、その人の行為や行動を理解することはできない」とでもなるでしょう。この言葉からもアドラー心理学における目標の重要性がわかると思います。

 一方、ドラッカーのマネジメント論でも目標は極めて重要な位置を占めます。
 ドラッカーのマネジメント論では、組織を社会の器官(オーガン)と定義します。すなわち組織とは、ある特定の社会目的を実現することで社会や地域、個人のニーズを満たすために存在する、とドラッカーは考えたわけです。

 ドラッカーが言う、組織が持つ社会目的とは「使命(ミッション)」、さらにはざっくりと組織の目標と言い換えてもいいでしょう。そして組織が成果を上げるためには、組織が持つ目的(目標)を理解することが最重要となります。なぜならその目標の理解なしに社会や地域、個人のニーズを満たすのは不可能だからです。

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アドラー 一歩踏み出す勇気
中野 明 著



【著者】中野 明(なかの あきら) 1962年滋賀県生まれ。作家。立命館大学文学部哲学科卒。同志社大学非常勤講師。ビジネス、情報通信、歴史の3分野で精力的に執筆活動を展開。著書に『超図解 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』(学研パブリッシング)、『ポケット図解 ピーター・ドラッカーの「自己実現論」がわかる本』(秀和システム)、『今日から即使える!ドラッカーのマネジメント思考』(朝日新聞出版社)、『悩める人の戦略的人生論』(祥伝社新書)など多数ある。近著は『アドラー 一歩踏み出す勇気』(SB新書)。