カルチャー
2014年10月2日
マイホーム購入で損をしない「賃貸サンドイッチ」とは?
[連載] 不動産を買うなら五輪の後にしなさい【6】
文・萩原 岳
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不動産の相場が過熱しているときの考え方


 投資の格言に「休むも相場」という言葉があります。狂乱に巻き込まれず、一歩引いて冷静に市場の行く末を観察することで、大局的な買い時や売り時を見極めることができるという趣旨です。

 マイホームの購入は投資ではありません。しかし、あらゆる商品は市況によって値段が変わりますし、不動産は金額が大きいため、タイミング次第では数百、数千万円もの差が発生します。そのため、買い時を間違えると数千万単位で損をすることがありえるのです。「マイホーム購入のベストなタイミングは各家庭のライフプランによって決まる」ことは前提としてありますが、同じ品質の不動産を買うならば、1円でも安く手に入れたいと思うのが人情でしょう。「家賃がもったいないから」と慌てて購入し、家賃数年分の含み損が発生してしまったら泣くに泣けません。

 『不動産を買うなら五輪の後にしなさい』について、Amazonで「五輪まで6年近くの長期にわたる期間の機会損失」を考慮していないというレビューがありましたが、上記のように相場が過熱していて割高なときは「休むも相場」を実践したほうがいいという反論ができます。

 「不動産関係者の方にとって、今買うのをやめてみては?」というアドバイスはとても受け入れがたいものです。業者の方は今買わなければ損であるという根拠を見せようとします。

「買い時」と「売り時」は別々の時期を組み合わせるのがベスト


 実は不動産の売買については、「買い時」と「売り時」は別々の時期を組み合わせるのがベストです。みんなが買いたいと思っているときに売る、売りたいと思っているときに買うのが、需給面からは正しい選択です。相場が高い時に売り、安い時に買うのは、株式を含めすべての商品売買の鉄則です。不動産については、例えば国土交通省が発表している地価公示によって、時系列的な価格動向が把握できますので、今が上がっているのか下がっているのかについては観測が可能です。

 「景気がいいから家が高く売れた」と喜ぶ人がいますが、売ったと同時に買ってしまいますと、結局高い時期に買い戻すことになり、損得はゼロです。

 不動産の価格は上昇トレンドと下降トレンドがあり、それぞれ数年間維持されます。そのため、数年は売りと買いの間に休む期間を設けた方がいいでしょう。

売買のタイミング(「賃貸サンドイッチ」のイメージ) ※クリックすると拡大

 つまり、相場が反転するまでの間は、賃貸住宅に住めばいいのです。これを「賃貸サンドイッチ」という考え方で提唱しています。売買のタイミングは右のイメージ図に示しました。賃貸住宅の賃料は、土地や住宅の値段ほど上下せず、基本的には安定しており、変化するにしても下げ幅、上げ幅はなだらかです。






不動産を買うなら五輪の後にしなさい
不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ
萩原 岳 著



萩原 岳(はぎわら がく)
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。
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