カルチャー
2014年11月11日
ネット生保が最安、とは限らない!
[連載] 保険選びは本当にカン違いだらけ【5】
文・鬼塚眞子
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ネット生保にまつわる多くの誤解


 平成20年にSBIアクサ生命(現、アクサダイレクト生命)がネットで申込み可能な商品を発売しました。
 ネット専用なので申込みが簡潔に済ませられることや、営業コストの削減で実現した低保険料を最大の武器としていました。

 ネット専用からスタートしたライフネット生命やアクサダイレクト生命は、今では代理店販売も積極的に展開するようになりました。

 一方、チューリッヒ生命のように、電話販売・代理店販売から始まり、ネット申込みを平成25年から始めた会社もあったりと、業界の事情は大きく変遷しています。

 ただ、前者2社は、紙の申込書が一切なく、ネット申込みしか受け付けないため、ネット専業生保と位置付けられています。

 さて、保険料についてよく誤解されているのですが、ネット専業生保が必ずしも最安とは限りません。
 たとえば、死亡保障を確保できる定期保険については、チューリッヒ生命の「定期保険プレミアム」は、前述のように、ネット販売だけでなく対面販売も行っていながら、最安クラスの保険料を打ち出しています。

 さらにネット専業生保については、保険料を比較するうえで、2つの注意点があります。

 1つ目は、非喫煙者で健康な人ほど、保険料は対面販売などのほうがネット専用商品より安くなる傾向があることです。
 近年は、死亡リスクの低い健康な人の保険料が安くなる「健康体料率(優良体料率)」という料金体系になっている商品が増えています。非喫煙者であれば、さらに保険料が割引されるケースもあります。

 ただ、これは今のところネット専用商品ではほとんど販売されておらず、逆に言うと「喫煙者も非喫煙者も、健康な人も健康ではない人も、保険料の区別がされていない」という状況です。
 非喫煙者で健康な体の人にとっては、保険料が平準化されることで、せっかく安くなるチャンスを逃しているとも言えます。

 たとえばチューリッヒ生命の「定期保険プレミアム」の場合、40歳男性で10年満期の保険金額2000万円であれば、保険料は標準体型で5480円、非喫煙優良体型だと3440円になります。

 2つ目は、1つ目の話の延長となりますが、とくに40~50代で健康な人は、健康体料率のないネット生保よりも健康体料率のある商品のほうが、さらに保険料が安くなる傾向が強いことです。

 以前からネット生保は、「ネット」という販売方式と相性の良い20~30代の保険料は安いが、40代後半以上になると他社商品と比べて大きなアドバンテージが見えにくい、という指摘がありました。

 40代で子どもがある程度大きくなり、そろそろ保険を見直そうと考えている人は、生命保険協会に加盟している保険会社だけでも43社(平成26年9月1日現在)あるので、選択肢を幅広くして保険料や内容を比較することをおすすめします。






保険選びは本当にカン違いだらけ
20年後に後悔しない保険常識
鬼塚眞子 著



【著者】鬼塚眞子(おにつかしんこ)
大手生保会社の営業職、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャル・プランナー(FP)として独立。保険業界と商品に精通し、保険営業とFP資格のある、日本では稀有な存在の保険ジャーナリストとして知られている。2010年、保険業界活性化を図るため、保険のすべてのチャネルを横断する「オーツードットコム 保険業界の明日を考える会」(現、トリプルA)を主宰。マスコミ出演、執筆、講演、相談で幅広く活躍中。近著は『保険選びは本当にカン違いだらけ』(SB新書)
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