ビジネス
2014年12月11日
インドネシアに見るITビジネスの将来像(その2) ~ソフトウェアの工業化がSIビジネスの未来を拓く~
[連載] ジャカルタで働く社長のコラム【3】
文・中村 けん牛/協力・吉政 忠志
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前回はWordPressという圧倒的世界1位のシェアを持つCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用した自社サービス・自社製品をビジネス展開することは、システムインテグレーターの生き残る道の一つであり、その動きをインドネシアを例に紹介しました。今回は日本のシステムインテグレーターに焦点を当て、生き残りのためのもう一つの道を模索したいと思います。


日本のシステムインテグレーターの状況


 10年前と比べると、企業の合併数は増えてきました。会社名は残しつつ、ホールディング会社の資本傘下に入る会社が多いです。私が社会人になった20年ほど前のシステムインテグレーターにおける業績トップ10で、現在も当時と同じ独立系で残っている会社は半分ほどしかありません。個人的な推測になりますが、システムインテグレーターが現状の体制を維持できなくなってきているからでしょう。

 大きな尺度で話をすれば、次の3点の理由から、従来のやり方でのシステムインテグレーターのビジネスは減少していくと考えています。

1)日本の人口減少
 ご存じの通り、日本は人口が減少しています。人口が減れば日本国内での仕事は減るので、国などのエリアに依存するシステムインテグレーターは、仕事数が頭打ちになります。

2)システム開発の効率化
 WordPressのようなCMS、フレームワークはもとより、開発言語ではPHPやRuby、Perlなどのライトランゲージといわれる、少ない工数で開発できる言語が普及しています。WordPressのCMSシェアは60%(W3C Tech調べ)となり、PHPはサーバ側のプログラミング言語シェアで82%(同)となりました。さらには、アジャイル開発手法という、開発しながらお客様と要件を詰めていく、短期間での開発を実現する手法が普及してきています。開発言語、開発手法などの開発環境の効率化が進み、人手で商売をする時代が日本でも本当に終わりを告げようとしています。

3)システム運用の効率化
 これは皆様もよくご存じ、クラウドの話です。クラウドが存在する前は、運用担当である技術者が物理サーバを一台一台管理していました。運営担当が工具を片手に、サーバ機器のハッチを開けてメンテナンスなどもしていました。いまは大きく時代が変わり、サーバは物理サーバから仮想サーバに主役が移り、少ない物理サーバ数でかなりの仮想サーバを収納できます。そのため、サーバの運用担当者も少人数でできるようになりました。

 当事者は口に出さないまでも、これら事実は業界内であればだれでもわかっていることです。それゆえに、会社の収益が悪化する前に、統合して経営をスリム化していこうとしています。実際に調査会社のIDC JAPANが2014年6月22日に発表した以下の報道文中にも、

「2014年、クラウドの普及に伴い、クラウド関連以外のITサービス市場は縮小へと向かい始めました。現在、国内ITサービス市場に占めるクラウド関連の市場規模割合は限定的です。しかし、国内ITサービス市場において、成長領域にあるのは、クラウド関連となります。ベンダーにとって、事業規模の大きな伝統的なITサービス事業は重要である。しかし、既存事業に固執するのではなく、成長領域であるクラウドに経営資源を振り向け、新規事業を開拓することが、ベンダーが生き残るためにも、成長するためにも必要である」

と、同社ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏の言葉が記載されています。

※IDC JAPAN株式会社 2014年6月22日報道発表原文
http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20140623Apr.html

フルオーダーメイドからセミカスタムメイドへと進化


 意外に知られていませんが、世の中でオーダーメイドが中心の業界はソフトウェアと建設しかありません。ただ、実は、建設業界はソフトウェア業界よりも部品化が進んでおり、フルオーダーメイドが中心ではなくなっています。柱や壁、ボルトなどに品番が振られ、部品として業界内で管理されています。

 一見、フルオーダーメイドで作られている建物に見えても、基本的には部品の組み合わせで、セミオーダーメイドで作られています。一方でソフトウェア業界はどうでしょうか? フルスクラッチの開発受注がまだまだ多いです。これを建設にたとえると、お客様が注文した後、柱から壁までノミやカンナで切り出して家を建てるような感じです。現代でも残るそのような建築手法は、宮大工による寺社建築くらいです。これはとてもコストがかかりますが、宮大工の手による建造物は百年以上も持ちます。しかしソフトウェア産業のフルスクラッチ開発による成果物は、5年くらいしか持ちません。ハイコストなフルスクラッチ開発で5年しかもたないような開発方法は、もう流行らなくなります。これは、業界の人でなくてもわかると思います。

 いままで、この方法が20年も30年も残ってきたのは、ITが普及する中で、顧客側の選択肢がフルスクラッチのオーダーメイド以外になかったからです。さらに、この手法が普及した時期はいまから30年から40年前であり、日本は好景気の真っただ中でした。この時代は、大量な人材を投入してフルオーダーメイドの贅沢なシステムを作ってもよい状況にあったのです。その後日本は安定成長期に入りましたが、ソフトウェアの開発方法として、多くの顧客にはフルオーダーメイドの開発手法しか選択肢になく、顧客側も自分が導入したシステムを自己否定できず、投資が緩やかに継続されてきました。これが、フルオーダーメイドによるシステムインテグレーターのビジネスが延命されてきた理由だと考えます。

 いま、この状況が大きく変わろうとしています。

 いよいよセミオーダーメイドの開発の時代が到来しています。前号でも述べているWordPressに、その将来が見えます。

 WordPressにはプラグインというソフトウェアの部品が3万以上もあります。そしてWordPressは世界60か国語に翻訳され、使われています。プラグインは技術者でなくても、インターネットを閲覧するITリテラシーさえあれば、追加機能を導入できる仕組みです。WordPressでサイトを構築する際には、プラグイン一覧(機能集)やテーマ一覧(画面構成パターン集)から欲しいものをポチポチとボタンを押してインストールするだけで、Webサイトが構築できます。

 これはなにを意味しているのでしょうか。つまり、「ソフトウェアの工業化」の基盤が出来上がりつつあることを示しています。

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本格ビジネスサイトを作りながら学ぶ WordPressの教科書2
スマートフォン対応サイト編
プライム・ストラテジー株式会社 著



【著者】中村 けん牛
プライム・ストラテジー株式会社 代表取締役。
早稲田大学法学部卒、会計士補。大手証券会社を経て、2002年、プライム・ストラテジー株式会社設立。2005年、ジャカルタにプライム・ストラテジー・インドネシアを設立して以来9年間、ジャカルタでのITビジネスに携わる。執筆した書籍『WordPressの教科書』シリーズは日本、韓国で累計3万部突破のベストセラーに。2014年11月にはインドネシアの大手コンパス・グラメディアグループよりインドネシア語で『WordPress Panduan Mambangun Situs Web Berskala Bisnis』を出版。

プライム・ストラテジー株式会社
http://www.prime-strategy.co.jp/


【協力】吉政 忠志
プライム・ストラテジー株式会社 マーケティングアドバイザー
吉政創成株式会社 代表取締役