ビジネス
2014年12月19日
折れない心「レジリエンス」を鍛える7つの技術【後編】
[連載] なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?【3】
文・久世浩司
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スピード回復をするための「レジリエンス・マッスル」


 ネガティブ感情に対処し、精神的な落ち込みを速やかに底打ちすることは、非常に大切なレジリエンスの基本技術です。この方法を知らないために、パワフルでしつこいネガティブ感情に支配され、うるさく吠える思い込み犬に悩まされている人はたくさんいます。

 ただ、これはレジリエンス・トレーニングのゴールではありません。マラソンにたとえると「折り返し地点」にすぎません。精神的な落ち込みに「底打ち」した次の段階が、上に向かって這い上がる「回復」の段階です。

 そのためには、上り続けるための「筋力」が必要となります。それもできるだけ早期に回復したほうが、成功や達成に向けたアクションにつなぐことができます。

 スピーディーに立ち直るために必要な心理的資源を「レジリエンス・マッスル」と名づけました。この筋肉の訓練法を4種類、紹介します。これらは、レジリエンスを高める第3から第6の技術ともなります。

レジリエンスを鍛える7つの技術【3】「やればできる」と信じる「自己効力感」を身につける


自己効力感を高める4つの要因 ※クリックすると拡大

 レジリエンス・マッスルの第一訓練法が「自己効力感」を高めることです。

 これは、たとえ目標や課題が挑戦度が高く達成することが無理と思えても、自分であれば障壁を乗り越えて到達することができるという信念を示し、4つの形成要因があります。

 まず1つめが「実体験」です。「やればできる!」という信念をもつには、小さな成功体験をもつことが早道なのです。

 2つめの要素は「お手本」、誰かがうまくやっている姿を間近で観察して「私にもできるかもしれない」と信じ込む代理体験です。自分のロールモデルを見出すことです。

 そして3つめの要素は、周囲の人から口頭による「励まし」を受けることです。たとえば、「あなたならできると思うよ」と背中を押すような励ましは、とても効果的です。

 最後の4つめが「ムード」です。特に、チームで目標を達成するときに必要な組織効力感を高める際にも役に立ちます。高揚感を高めるような声かけをするのもいいでしょう。

レジリエンスを鍛える7つの技術【4】自分の「強み」を活かす


24種類の強み ※クリックすると拡大

 レジリエンス・マッスルを鍛える第二訓練法が、自分を特徴づける「強み」を理解して、それを挑戦や逆境で活用することです。

 自分の強みに気づいていない人がたくさんいます。それは「宝の持ち腐れ」です。

 自分を特徴づける強みを把握するには、米・VIA研究所の「VIA‐IS」を使用することをおすすめします。自分を特徴づける強みのレポートを入手できます。

 強みを開発することは、レジリエンスの特徴でもあるストレスに対する緩衝力となる効果も期待できます。さらには、それらの強みを新しい仕事や趣味などに使うと、幸福度が高まり、抑鬱の徴候が低下し、自尊心が向上する素晴らしい副産物もあります。

 非営利団体であるVIA研究所では、このツールを無料で公開しています。質問もレポートも日本語で翻訳されたものがあって便利です。世界で200万人以上が使用した信頼できるツールで、ぜひこの機会に自分の強みを発見してください。

 詳しくは、こちらのURL( www.positivepsych.jp/via.html )にアクセスし、説明文に従ってください。






なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?
実践版「レジリエンス・トレーニング」
久世浩司 著



【著者】久世 浩司(くぜ こうじ)
ポジティブ サイコロジー スクール代表。慶應義塾大学卒。P&Gにて、高級化粧品ブランドのマーケティング責任者としてブランド経営、商品・広告開発、次世代リーダー育成に携わる。その後、ポジティブ心理学、及びレジリエンスを活用した人材育成に従事。NHK「クローズアップ現代」で「折れない心の育て方・レジリエンスを知っていますか?」にてレジリエンス研修が放映された。著書に『「レジリエンス」の鍛え方』『親子で育てる折れない心 レジリエンスを鍛える20のレッスン』(実業之日本社)『なぜ一流の人はハードワークでも心が疲れないのか』(SBクリエイティブ)がある。認定レジリエンス マスタートレーナー。
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