カルチャー
2015年1月23日
実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(前編)
[連載] 保険ぎらいは本当は正しい【4】
監修・横川由理 文・長尾義弘
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特約の罠(1)先進医療特約


 保険には、さまざまな特約を加えることができます。
 保険のパンフレットを読んでいると、あの特約もこの特約も、すべてをつけなければならないような気になります。

 しかし、これらの特約は、本当に必要なのでしょうか?

 保険のCMでは「先進医療特約」というフレーズが出てきます。しかし、これを正確に理解している方は少ないようです。

先進医療の実績 ※クリックすると拡大

 まず「先進医療」について簡単に説明しておきましょう。
 これは厚生労働省が認めた、保険診療の対象ではない先進的な医療技術を指します。つまり健康保険による3割負担の対象ではない、ということです。
 しかし同時に、混合診療(保険診療と保険外診療を併用すること)を行っても、保険診療の部分は健康保険が適用され、3割負担で大丈夫という治療です。
 ここが通常の「自由診療」との違いです。

 たとえば、総額10万円の保険診療を受けたら、自己負担は3割の3万円です。
 ここに治療費が100万円の自由診療を併用した場合、すべてが健康保険から外れ、自己負担の合計は(103万円ではなく)110万円になります。
 保険診療と自由診療を混ぜて利用すること(混合診療)はできず、すべて自由診療扱いになってしまう、というわけです。

 しかし、先進医療の場合は、10万円の保険診療部分に対する負担は3万円のまま、先進医療の治療費100万円を支払えばよく、自己負担の合計は103万円になるのです。
 つまり、混合診療が認められた自由診療が先進医療だと言えます。

 何を先進医療の対象とするかは、定期的に見直され、現在は107の治療法が認められています。

先進医療の実態


 さて、先進医療特約は、月々の保険料が100~200円であるにもかかわらず、1000万~3000万円ぐらいの保障がついています。
 たとえば、重粒子線治療では約300万円、陽子線治療では約270万円の費用がかかります(入院費などは別)。
 これを保障してくれるのですから、かなりお得な特約に見えますね。

 ここで「安すぎではないか?」と疑問を抱いたあなたは鋭いです。安く提供できる背景には、それなりのカラクリがあります。
 実は、先進医療特約を使う方が非常に少ないのです。

 たとえば、重粒子線治療が受けられる病院は全国で4か所、年間の実施件数は873件(平成23年)。陽子線治療が受けられる病院は全国で9か所で、年間の実施件数は1508件(同)です。治療を受けたくても、簡単には受けられないのが実情です。

 では、実際に先進医療特約を使った方はどれくらいいるのでしょうか?
 中央社会医療協議会の資料によると、平成24年7月1日から平成25年6月30日までに先進医療を受けた全患者数は2万655人です。

 これは全患者数ですので、先進医療特約を使った方はもっと少なくなるはずです。関係者からうかがった話を元に推測すると、先進医療特約の加入者数全体から見て、0.02%にも満たないと思います。

 これが、先進医療特約の実態です。

(第4回・了)
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保険ぎらいは本当は正しい
横川 由理 監修/長尾 義弘 著



【監修者】横川由理(よこかわゆり)
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)。お金の知識を広めることをライフワークとして、ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に幅広く活動している。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』(以上、宝島社)など多数。監修には「別冊宝島」の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
http://fp-agency.com/

【著者】長尾義弘(ながおよしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』(河出書房新社)などがある。
http://neo.my.coocan.jp/