カルチャー
2015年1月21日
20代・30代に増えている「首のヘルニア」
[連載] 体の不調は「首こり」から治す、が正しい【3】
文・三井 弘
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「首」を酷使し続ける現代日本人


 首の不調が起こるのは、首を酷使する生活が続くことが最大の要因です。
 それでなくとも首は、日常生活の中で絶えず動かされ続けています。

 私たちが日頃どれだけ無意識に首を使っているかは、10分でも首をまったく動かさずに生活してみるとよくわかります。
 歩くにしても、モノを取るにしても、何かを食べるにしても、パソコンを使うにしても、たちまち不便になってしまうはずです。

 首が健康だからこそ、私たちはつつがなく日常生活を送ることができているのです。
 しかし、そのことを意識することはほとんどありません。首がスムーズに動くことは、意識するまでもない〝当たり前〟のことだからです。

 そのため必要以上に負担をかけてしまっても、よほどの症状が出ない限り、大概の人は首が傷んでいることに気づかないのです。

 さらにやっかいなことに、首は大変慎み深く、我慢強い部位です。酷使されて、「もうそろそろ限界だあ」となっても、なかなか声を上げようとしません。
 酷使に耐えて耐えて、「本当にもうダメです」となったとき、起きぬけの突然の「痛み」「しびれ」というかたちでSOSを出す。そのようなパターンも数多くあります。

 もちろん、その前に、肩こりや背中痛といったサインを出してはいるのですが、首そのものの痛みではないため、それが首への負担から生じていると、ご主人さまに気づいてもらえないことのほうが多いのです。

 首そのものへの違和感や痛みが出た時点で、症状はかなり重篤になっているというケースが少なくないのも、サインに気づいてもらえないからなのです。

 朝起きたら急に痛くなっていた。しかも思い当たる原因がない。
 ヘンな寝方をしたわけでも、ヘンなところで寝たわけでも、一晩中徹夜で仕事をしたり、ボクシングで殴られたり、スポーツで誰かとぶつかったりしたわけでもない。
 明らかな原因がないのに、朝になったら痛くなっていた。

首を前に曲げる動作の多い職業は要注意!
(c)山原恭子

 首の故障は、このように、いきなり症状として出現することもあります。
 しかし、突然起こったかのように見えて、その実は長い間、知らず知らずのうちに、生活の中で首に負担をかけ続けてきたことの結果でもあるのです。

 言うなれば、首のトラブルも生活習慣によるもの。つまり、がんをはじめとする生活習慣病と同じです。首をいじめる生活の積み重ねからきています。
 そのことに気づかなければ、首を悪くする人は今後ますます増えていくに違いありません。

 実際、首を悪くして私のクリニックにやって来る患者さんは、腰を悪くして来院される方を追い抜きそうな勢いで増えています。
 それも30代・40代の働き盛りを中心に、下は中学生から上は高齢の方まで、年齢性別問わず患者層が幅広いことが首のトラブルの特徴とも言えます。






体の不調は「首こり」から治す、が正しい
三井 弘 著



三井 弘(みつい ひろし)
1943年、岡山県岡山市生まれ。1970年、東京大学医学部を卒業。同整形外科入局。1977年より三井記念病院勤務。1984年「三井式頚椎手術器具」を開発。三井記念病院整形外科医長を経て、現在、三井弘整形外科・リウマチクリニック院長。専門分野は脊椎、関節(人工関節)。日本リウマチ学会評議員。著書に『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)、『首は健康ですか?』(岩波アクティブ新書)など多数。
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