カルチャー
2015年1月21日
20代・30代に増えている「首のヘルニア」
[連載] 体の不調は「首こり」から治す、が正しい【3】
文・三井 弘
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首のヘルニアが急増中


自覚症状のないまま、ある日突然、首の激痛に襲われることがある
(c)山原恭子

 首の故障のなかで、近年深刻なのがヘルニアの患者さんの増加です。
 クリニックは毎日大勢の患者さんであふれていますが、待合室にいる人のうち、約半分は首のヘルニアと言っていいぐらいです。

「ヘルニアは腰の病気では?」と思われるかもしれませんが、さにあらず。知られていませんが、首の頸椎(けいつい)でもヘルニアは起こります。しかもヘルニアの患者さんで最も多い層が20代や30代の若い世代なのです。

 ヘルニアという病気は、骨同士がぶつからないようにクッションの役目を果たしている「椎間板(ついかんばん)」という部分が変形し、飛び出してしまう病気です。飛び出した部分が脊髄(せきずい)や神経根を圧迫することで、激しい痛みを伴います。

 きっかけは、急な動作で首に負担や衝撃を与えたり、捻挫や打撲などの外傷だったりします。スポーツをしていてなることもあります。

 しかし、いずれも"きっかけ"であって原因ではありません。真の原因は何年にもわたる椎間板の変形なのです。

 病気というのは、往々にして、自覚症状がないまま何年にもわたって少しずつ病状が進み、ある日ふいに痛みとなって現れたりするものです。
 首の不調や病気も例外ではありません。何かの外的要因で急に痛みが起こったとして、そこに至るまでにはすでに何らかの積み重ねがあると考えて間違いないのです。

 歯医者さんで「虫歯があります」と言われたら、今は痛くなくてもそのうち必ず痛みが出てきますね? でも、いつ痛み出すかは神のみぞ知る、です。
 首の病気であるヘルニアも同じです。

 くしゃみでなった人、スポーツをしていてなった人、寝相が悪くてなった人、朝起きぬけになった人と、症状の出るきっかけはいろいろでも、すべてはたまたまでしかありません。

 ヘルニアを起こすような生活が続いていて、自覚症状がないまま、何年も時間をかけて軟骨がすり減ったり、つぶれたりしていき、やがて脊髄や神経根を圧迫するほどにまでなる。徐々に慢性化して、ある日突如として激しい痛みに襲われる。
 なおかつ「痛い!」という自覚症状として出たときには、すでに病状は進んでいたりします。だから困るのです。

(第3回・了)





体の不調は「首こり」から治す、が正しい
三井 弘 著



三井 弘(みつい ひろし)
1943年、岡山県岡山市生まれ。1970年、東京大学医学部を卒業。同整形外科入局。1977年より三井記念病院勤務。1984年「三井式頚椎手術器具」を開発。三井記念病院整形外科医長を経て、現在、三井弘整形外科・リウマチクリニック院長。専門分野は脊椎、関節(人工関節)。日本リウマチ学会評議員。著書に『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)、『首は健康ですか?』(岩波アクティブ新書)など多数。
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