カルチャー
2015年3月18日
「虫食いは無農薬の証!」だから「美味しい」はウソ
[連載] 有機野菜はウソをつく【2】
文・齋藤訓之
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「硝酸態窒素」の多い野菜――緑色が濃すぎる野菜に注意!


 野菜などに含まれる硝酸態窒素が人間の健康に害を及ぼすといった話を聞いたことがある方もいるでしょう。この話題はときどき週刊誌やテレビなどで取り上げられることがあります。

 作物は体の中に硝酸態窒素を取り込むと他の物質に代謝するのですが、土から大量に供給されると代謝し切れずに体内に残ってしまうことになります。このような状態の作物は茎葉の緑色が濃すぎるように見えるものです。

 人間にこれが有害だという話は、人間の体内でこれが亜硝酸に還元されて、それがさらに発がん性物質であるニトロソアミンに変化するだとか、とくに白人の赤ちゃんなどでは亜硝酸が血中のヘモグロビンと結びついて酸欠を起こす(ブルーベビー症候群)だとかという話です。

 それで、ガンだとか赤ちゃんの命だとか、みんなが気になる話題であるため、メディアでセンセーショナルに扱われることがあるわけですが、実はこれらのメカニズムははっきり解明されておらず、硝酸態窒素の多い野菜を食べるとそうなるのかどうかもよくわかっていないのです。

 ただ、一つ言えるのは、そういう作物はあまりおいしくありません。本来、作物が栄養を取り込んで適正に代謝できたときに、作物の体の中の糖質、アミノ酸などのバランスが取れて、それがおいしさになるところ、そのようになっていないわけですから。

 よく農家や野菜の流通に携わる人が言うのは、「変な苦味を感じる」ということです。「病気になる!」と騒ぐのではなく、「おいしくなさそうだから買わない」ぐらいの反応がちょうどいいようです。

 また、そういうものを出荷している農家がいれば、どうもその人は栽培が下手な人らしいと見当をつけることもできます。

「この虫食いこそが農薬を使わなかった証拠だ」は別に誇れない


不完熟の堆肥がある畑で育てられたキャベツは虫食いが発生しやすい。また、硝酸過多の作物は害虫が好む臭いを発しているという

 しかし、作物の体内に未消化の硝酸態窒素が増えることで困るのは、むしろそうした安全性や味の問題よりも、虫害だと思われます。どうしたわけか、硝酸過多の作物は、害虫が好む臭いを発するらしいのです。ですから、色のどぎつい野菜というのは、しばしばあちこち虫食いだらけになっているものです。

 有機栽培農家を自称する人は、「この虫食いこそが農薬を使わなかった証拠だ」というセールストークを使うことがありますが、これも眉唾です。作物は品種によって、虫の食害から体を守るなんらかの仕組みを持っているものです。

 殺虫剤などの農薬を使わなかった場合、多少の虫食いはあるかもしれませんが、全体がボロボロになるほど食害にあっているというのは、その作物が健康に育っていなかったからだと見たほうがいいでしょう。
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有機野菜はウソをつく
齋藤訓之 著



齋藤訓之(さいとうさとし)
1964年北海道生まれ。中央大学文学部卒業。市場調査会社勤務、「月刊食堂」(柴田書店)編集者、「日経レストラン」(日経BP社)記者、日経BPコンサルティング「ブランド・ジャパン」プロジェクト責任者、「農業経営者」(農業技術通信社)取締役副編集長兼出版部長を経て独立。2010年株式会社香雪社を設立。農業・食品・外食にたずさわるプロ向けのWebサイト「Food Watch Japan」( http://www.foodwatch.jp/ )編集長。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。著書に『農業成功マニュアル「農家になる!」夢を現実に』(翔泳社)、『食品業界のしくみ』(ナツメ社)、共著に『創発する営業』(上原征彦編、丸善出版)ほか。