スキルアップ
2015年3月31日
どうしてあなたの話は伝わらないのか──カリスマ現代文・講師が教える「論理的に話す力」
[連載] 出口汪の論理的に話す力が身につく本【1】
文・出口 汪
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初めて企画提案のチャンスを得た、社会人3年目のOLゆい。しかし、言いたいことがまったく伝わらない…。そんなとき、かつての現代文の恩師・出口 汪先生に出会う──。カリスマ予備校講師出口 汪の最新著書『出口汪の論理的に話す力が身につく本』から、「確実に相手に伝わる話し方」のポイントを、出口先生とOLゆいとの会話形式でわかりやすく紹介していきます。【導入部をマンガで読みたい方はこちら】


どうしてあなたの話は伝わらないのか


先生:ゆいちゃんも社会人になって、話す場面で、いろいろと苦労してるのではないかな? 新入社員の頃と同じというわけにはいかないだろうからね。

──そうなんですよ。最近は、きちんとした言葉遣いをしなきゃって思うだけでも大変で...。その上、きちんと伝えなくちゃって考えたら、もう緊張して緊張して。

先生:誰でも、初めは苦労するものなんだよ。私だって、教育実習のときは緊張してガチガチだったし、高校の非常勤講師をしていたときも大変だったもの。

──えっ、先生もですか!? そうなんだぁ、少しは安心しました。

先生:私は子どもの頃からおしゃべりだったけど、しゃべれるのはプライベートの場面だけでね。実はかなりのアガリ性で、大学のゼミの発表なんて、ボロボロだったんだよ。いつも、「こう話せばよかった」って後悔ばかりしていた。

──そうなんですかぁ? 私の知ってる先生からすると、信じられませんけど。

先生:でも、そんな自分の経験があるから、自分の言いたいことが伝わらない、わかってもらえないっていう人の気持ちがよくわかるんだ。何で自分の言いたいことが伝わらないか、その原因はほとんどの場合、話し手、つまり自分にあるんだよ。だけど、これまたほとんど、そのことに本人は気づいていない。若い頃は、私もそうだったしね。何で、伝えたいのにわかってくれないんだ、どうして、自分のことを理解してくれないんだと思って悩んでいたんだよ。

──う~ん。自分の言いたいことをなかなかわかってもらえないと、つい、「どうして」、「お願い、わかってよ」とかって、思っちゃいますよ。

先生:でもね、それはひと言で言うと「他者意識」が欠けているからなんだ。若い頃の私も、この他者意識がなかったんだ。だから、わかってもらいたいと思うだけで、わかってもらうための努力や工夫ができていなかった。それならば、わかってもらえなくても、仕方ないよね。他者意識については、ゆいちゃん、わかるかな?

──「他者意識」ですか??

先生:人間はわかり合えないっていう意識のことだ。人はわかってもらえるようにしなければならない。そのために、「論理力」が大切なんだ。人間は、たとえ親子であっても、別個の肉体を持ち、別個の体験をしてきたのだから、そう簡単にはわかり合えないという意識、それが他者意識だ。

言い方を変えれば"自分のことは誰も知らない"という意識と言ってもいいかもしれないな。知らない相手には、自分のことを知ってもらおう、わかってもらおうと努力するだろ?

──初めて会った相手なら、もし、自分の言ったことを理解してもらえなくても、「何で?」って思わないかも。むしろ、どうすればわかってもらえるんだろう、って考えますよね。

先生:そうなんだ。だから、誰に対しても、どんなときも、「相手は自分のことを知らないんだ」とさえ思えばいいんだ。そうすれば、どうすればわかってもらえるのだろうと考えるはずだからね。






出口汪の論理的に話す力が身につく本
出口 汪 著



出口 汪(でぐち ひろし)
1955年東京都生まれ。東進衛星予備校講師、出版社・水王舎を経営。受験生たちの熱い支持を受け続けている、大学受験現代文の元祖カリスマ講師。宗教家・出口王仁三郎の曾孫。関西学院大学文学部博士課程修了後、代々木ゼミナール、旺文社のラジオ講座などで爆発的人気を博し、伝説の講師となる。また、論理力を養成する画期的な言語プログラム「論理エンジン」を開発し、現在、私立を中心に全国250校以上の小中高で導入されている。
主な著書に『出口汪の新日本語トレーニング』(小学館)、『現代文レベル別問題集』(東進ブックス)、『出口汪のシステム現代文』シリーズ(水王舎)、『奇跡の記憶術』(フォレスト出版)、『出口 汪の論理的に考える技術』(小社刊)など多数があり、その累計部数は600万部を超える。
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