スキルアップ
2015年4月3日
なぜあの人の話はわかりやすいのか──論理的な人が使っているたった3つの基本原則
[連載] 出口汪の論理的に話す力が身につく本【2】
文・出口 汪
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カリスマ予備校講師出口 汪先生と、社会人3年目のOLゆいが、会話形式で「確実に相手に伝わる話し方」のポイントをわかりやすく解説する本記事。前編では、論理的に物事を考え、相手に伝えるためには、3つのルールを身につけて、その規則に従うだけで、論理的な話し方ができようになるとお伝えしました。後編では、その3つのルールについて、具体的に解説していきましょう。【導入部をマンガで読みたい方はこちら】


ルール1●論理の基本は「イコールの関係」から


先生:基本は3つだけだし、その1つひとつも、まるでむずかしくないんだ。難解に思える文章だって、その3つのルールで成り立っているんだからね。じゃあ、ここで以前の繰り返しになるけど、大事なことだから簡単に復習しておこう。

まずは、論理の基本である「イコールの関係」から説明しよう。

ゆいちゃん、ゆいちゃんのお母さん、私の妻、この三人は「女」という言葉でひと括くくりにできるよね。違った言い方をすると、三人の共通点を抜き出すと、「女」ということになる。ゆいちゃんたち具体的な三人の人間から、「女」という一般的な概念を生み出したわけだ。これは論理的な用語で言うところの「抽象化」であり、こうした具体的なものから一般的なものを求めることを、論理的思考法では「帰納法」と言うんだ。

今度は逆に、「女」という概念からさっきのゆいちゃんたち三人を引き出せば、それは「具体化」であり、そういう一般から具体を求める思考法は「演繹(えんえき)法」と呼ばれる。抽象化とか演繹法とか、言葉だけを聞くとすごく難解な感じがするけれど、実際にやっていることはむずかしくはないよね。

──先生が言ったように、「ロンリリョク」って言葉を聞くとガチガチに固くって引いちゃいそうだけど、実際にやってることはむずかしくないっていうか、単純っていうか......。こんなにわかりやすくていいの? そんな気がしちゃいますよ。

先生:「イコールの関係」は、すごくよく使われるんだ。「レポートとか評論といった文章には、本当に頻繁に出てくる。すごく複雑に感じられる文章でも、この「イコールの関係」を見抜くだけで、すごくわかりやすくなる。これは話すときでも、同じようによく使われる。

──プレゼンするときなどはそうでしょうけど、日常会話っていうか、たとえば、取引先の人と話をしているときにも、使っているんですか?

先生:もちろんだよ。
ゆいちゃんだって、上司と話しているとき、取引先と話しているときに、きっと「イコールの関係」を使っているよ。自分の意見を伝えているときに、自分の考えと似た誰かの意見を引用したり、具体的な例をあげたりするだろう?

「たとえば...」っていう具合に。

実はそれも「イコールの関係」だよ。

──今日の話の中でも、先生が、「たとえば...」って、具体的な例をあげて説明してくれたけど、それもみんな「イコールの関係」なんですね。

先生:そうさ。ゆいちゃんが仕事で読む資料の中にも、きっと「イコールの関係」がたくさん出てきているはずだ。実際にどんなものか、図式にしてみると、わかりやすい。

A(自分の主張)=A′(具体例・エピソード・引用)

レポートとか企画書などは、「イコールの関係」が使われる代表的な例じゃないかな。まず自分の考えを述べて、それから自社や他社の似たような企画の事例をあげるのは「イコールの関係」だし、自分の考えの正しさを裏づけてくれる統計などを示すのもそうだ。

──でも先生、「イコールの関係」とは逆、つまり言いたいことと反対のことをいう場合もありますよね。

ルール2●論理に不可欠な「対立関係」


先生:うん。それが論理の基本の二番目「対立関係」になる。
一般に、言葉や概念には「対」になるものがあるよね。「男と女」「天と地」「高いと低い」「大きいと小さい」など、こういった対になった言葉の間には「対立関係」という論理関係がある。企画書を書くときとか、プレゼンをするとき、「差別化」という方法で過去の事例との違いを際立たせて、新しい企画の斬新さや優位性を訴えることがあるよね。これも「対立関係」になる。

──あっ、プレゼンに何度かお手伝いで参加したことがあるんですけど、そういう話し方を先輩がしていました。前の製品とはここがこんなに違うとか、ここが新しいとか...。なるほどって、納得してたんですけど、説得力がありますよね。あれが、「対立関係」なのかぁ...。

先生:たとえば、海外勤務から戻ってきた人が、「日本はいいよ、やっぱり。安全で、夜中に一人で歩いていても、本当に安心だもの。向こうじゃ...」と、自分が暮らしていた国、街の治安の悪さを話したりする。そうすると、いかに日本が安全で、安心して暮らせるのか、治安がいいのかが、よく実感できるよね。これも「対立関係」だ。

ただ「日本はいい国だ」、「日本は安全で素晴らしい」と言われても、あまりピンとこないけれど、治安の悪い国や街のことを例に出して話されると、日本のいいところがよくわかる。対比することによって、日本の良さが際立つんだ。

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出口汪の論理的に話す力が身につく本
出口 汪 著



出口 汪(でぐち ひろし)
1955年東京都生まれ。東進衛星予備校講師、出版社・水王舎を経営。受験生たちの熱い支持を受け続けている、大学受験現代文の元祖カリスマ講師。宗教家・出口王仁三郎の曾孫。関西学院大学文学部博士課程修了後、代々木ゼミナール、旺文社のラジオ講座などで爆発的人気を博し、伝説の講師となる。また、論理力を養成する画期的な言語プログラム「論理エンジン」を開発し、現在、私立を中心に全国250校以上の小中高で導入されている。
主な著書に『出口汪の新日本語トレーニング』(小学館)、『現代文レベル別問題集』(東進ブックス)、『出口汪のシステム現代文』シリーズ(水王舎)、『奇跡の記憶術』(フォレスト出版)、『出口 汪の論理的に考える技術』(小社刊)など多数があり、その累計部数は600万部を超える。