スキルアップ
2015年4月3日
なぜあの人の話はわかりやすいのか──論理的な人が使っているたった3つの基本原則
[連載] 出口汪の論理的に話す力が身につく本【2】
文・出口 汪
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ルール3●「理由づけ」と「因果関係」でより論理的に


先生:自分が意見を言ったなら、その証拠として具体例をあげる。さっきの「イコールの関係」だ。これは大切なことだよ。言いっぱなしでは、説得力がないし、納得をしてもらえないからね。でも、これだけではまだ足りないんだ。その具体例がなぜ証拠になるのか、あるいは具体例からどうしてその意見が導き出されるのかを説明しなければならない。

これを「理由づけ」と言うんだけど、これによって自分の意見の説得力がすごく増すんだ。

──先生の言っていることはわかります。証拠をあげるだけじゃなくて、なぜそれが証拠になるのかを説明されたら、すごく納得できるし、反論なんてできそうもありません。でも、ちょっとむずかしいような...。「イコールの関係」や「対立関係」に比べると、わかりづらいっていうか。

先生:確かに、「イコールの関係」みたいに明解ではないかな。でも、そんなにむずかしいわけでもないんだよ。それに、これは日常的な会話というより、文章を書くときやプレゼンや会議で発表するときなど、前もって準備ができるときに使われることが多い。何度も使っていると、商談のときにも、自然とこうした話し方ができるようになるよ。

わかりやすい文章、話し方というのは、どれが意見か、証拠か、「理由づけ」か、すぐにわかるものなんだ。

読んだり、聞いたりしていて、それがわからないようなら、それは文章や話し方に問題があることになる。つまり、論理的な構成が大事なんだよ。聞く人の立場になって順序立てて話せば、わかりやすくて、説得力のある話ができるはずだしね。

──なるほど、「流れ」が大事っていうことですね。この「理由づけ」ができれば、すごく説得力が出ますよね。上司もすぐに納得してくれそう。がんばって「理由づけ」ができるようにならなくちゃ。

先生:自分の意見、具体例、そしてこの「理由づけ」という流れがきちんとできていると、聞いている人はすごくわかりやすい。わかりやすいから何を言いたいのかがしっかり理解できるし、論理的構成ができているから説得力もあるというわけだね。

じゃあ、より論理的になるためのもう一つの方法、「因果関係」を説明するよ。

これもまったくむずかしく考えなくていい。

「理由づけ」は「A↑(なぜなら)B」という形だったけれど、「因果関係」は「A↓(だから)B」という形になる。簡単に言ってしまえば、順序が逆だけど、論理構成としては一緒と言ってもいい。

──うーん。因果関係という言葉は結構耳にするけれど、これはまた手ごわそうな印象が...。

先生:論理的構成をわかりやすく言うと、まず主張、意見があって、それから具体例をあげて、最後に「理由づけ」だ。それに対して、「因果関係」は、最初に具体例をあげて、そこから考えられる共通性が導き出されるという形になっている。最後に「だから、こういう結論が導き出されます」と主張を持ってくるんだ。話すときはこの「因果関係」の方が使われることが多いかもしれない。

──ああ、これは普段の会話の中でも使っていそう。「...だから、こうなる」っていう方が、話すときには自然にできそうな気がしますね。

先生:そうだね。日本人は「因果関係」が好きというか、日本語の構造に合っているのかな。文章でも、最後に 主張を持ってくる「因果関係」の構成をとっているものが多い。話すときも、「因果関係」で話しがちかもしれない。

重要な話をするとき、とくに、会議などで発言するときは、「理由づけ」の方が相手に伝わりやすい場合も多いんだ。

──なるほど。すこしのコツでぐっとわかりやすくなるんですね!

(了)





出口汪の論理的に話す力が身につく本
出口 汪 著



出口 汪(でぐち ひろし)
1955年東京都生まれ。東進衛星予備校講師、出版社・水王舎を経営。受験生たちの熱い支持を受け続けている、大学受験現代文の元祖カリスマ講師。宗教家・出口王仁三郎の曾孫。関西学院大学文学部博士課程修了後、代々木ゼミナール、旺文社のラジオ講座などで爆発的人気を博し、伝説の講師となる。また、論理力を養成する画期的な言語プログラム「論理エンジン」を開発し、現在、私立を中心に全国250校以上の小中高で導入されている。
主な著書に『出口汪の新日本語トレーニング』(小学館)、『現代文レベル別問題集』(東進ブックス)、『出口汪のシステム現代文』シリーズ(水王舎)、『奇跡の記憶術』(フォレスト出版)、『出口 汪の論理的に考える技術』(小社刊)など多数があり、その累計部数は600万部を超える。
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