ビジネス
2015年4月21日
ヒット商品の裏に「半径3メートルの行動観察」アリ!
文・髙橋広嗣
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行動観察してみよう


 「この居酒屋、吉野家の新業態らしいけれど、うまくいくだろうか? 観察しながら飲んでみよう」

 2014年7月、都内品川区の西五反田1丁目交差点近くに、吉野家の居酒屋新業態「吉呑み」ができたことを聞きつけ、会社のスタッフ2人とともに飲みにいきました。この店は「吉呑み」3店目の実験店舗といいます。

 昼間は通常の牛丼店として営業し、1階は牛丼店のまま、2階だけ夕方から"ちょい飲み店"に切り替わります。生ビールや角ハイボール、焼酎のほか、まぐろの刺身なども300円台で楽しめる手ごろな価格が売りのようです。

 時刻は19時すぎ。入店して階段を上がり、到着した2階を見渡すと、すでに20~30歳代前半の男性客が4人席に3グループほどいます。テーブルの上を見ると飲み干したビールジョッキが2、3置いてあり、食べ物の皿はそれほどありません。

 ひと通り眺めながら、私たち3人は席に着きました。

 飲み始めてから1時間ほど経つと店内はほぼ満席になり、だいぶ賑やかになってきました。それぞれのテーブルの上のビールジョッキは、片づけが間に合っていません。

 お客さんたちはオペレーションの手際の悪さをあまり気に留めた様子はなく、和気あいあいとした雰囲気で飲んでいます。

 隣のグループの話に聞き耳を立ててみると、どうもこの近くで働いており、ちょっと前からこの店の看板が気になっていたそうな。今回、友人とともに初めて来店したようです。

 なんとなくこの店は、仕事の話というより友人との話、愚痴というより趣味の話。そんな雰囲気がお似合いのようです。

半径3メートルの行動観察に大ヒットのタネがある


 私たちは飲みながら、「吉呑み」をマーケティングの教科書通りに分析してみました。

◎20歳代中心の仕事帰りのお客(Who)
◎たくさん飲むより楽しく飲む(How)
◎おいしい食事よりも手ごろな食事(What)
◎"家飲み"のような雰囲気(Where)
◎22時30分で閉店(When)
◎手ごろな価格で家飲みのようにくつろげることに価値アリ(Why)

 実験店舗でオペレーションはぎこちないし、メニュー開発も発展途上であるものの、私たちは「この業態はうまくいく」と飲みながら結論づけました。

 外食であれば隣の隣のテーブルまで、小売店であればカテゴリー棚ひとつぶん、電車内であれば前後左右4、5人分──。そんな半径3メートルの空間にあるヒトやモノを眺めながら、消費者がなにを手にとり、なにに悩み、どんな行動をとっているのかを観察する。

 そして、その商品やカテゴリー、サービスといったものが、どうやったら消費者に受け入れられるのか。まるでクイズを解くように自問自答をしながらニーズを探ることを習慣化すると大ヒットにつながる。

 もちろん、予想が外れてしまうこともあります。でも、当たる精度は高まりますし、そもそも売れてから"後づけ解釈"で自分を納得させるのでは次につながりません。

 グーグルにも食べログにもアマゾンにも各種統計にも頼らず、「売れる根拠」を半径3メートルの行動観察から見つけられるのです。

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半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法
髙橋広嗣 著



髙橋広嗣(たかはしひろつぐ)
フィンチジャパン代表取締役。早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社設立に参画。食品、飲料、通信キャリア、化粧品、製菓メーカー等の商品開発支援を行っている。といった企業の商品開発を手がける。