ビジネス
2015年4月27日
「ピケティ」が私たちに教えてくれること
インタビュー・安部徹也
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【1】自らが資本家になること


 まず、1つめの「資本家」になること、です。実は、今の世の中、どんな人にとっても、資本家になることは非現実的なことではありません。

 ただ、投資するといっても、銀行での預金から、株式投資、不動産への投資など、様々なものがあります。そして、ご存知のように、リスクに応じて得られるリターンも変わってきます。

 たとえば、株式投資は、銀行預金とは比べ物にならないリターンがありますが、投資資金が何分の一になった、という話もよく聞くところで、ハイリスクハイリターンの投資といえます。

 ただ、今は、TOPIXに連動した投資信託など、リスクが低い商品もありますので、はじめやすいといえます。不動産投資は、最近、会社員の方でもはじめる方が増えていますが、もっとリスクの低い、REITなどもあります。

──これで、格差は狭まっていくと思いますか?

 そうですね。とはいえ、投資の世界は、ハイリスクハイリターンですから、多くのお金を投資した人が、多くもらえる、という部分はあります。格差を逆転するところまでは難しいかもしれませんね。

【2】自らの高い成長率を実現すること


──続いて「高い成長率を実現する」についてですが、そもそも、個人で格差を埋めるなんてできるんでしょうか?

 それは可能ですよ。個人の努力によって、高い成長率を実現することが、実のところ格差問題を解決する最も重要な方法だと思っています。

 たとえば、フォーブスの億万長者番付を見れば、1位の柳井正氏も、2位の孫正義氏も、3位の三木谷浩史氏も、自ら苦労して事業を起こしたわけですよね。みんながみんな、こんなふうに億万長者になれるとは思いませんが、少しでも状況を改善することはできると思います。

──具体的にはどのようなことを考えたらよいでしょうか。

 まず、高い成長率を実現するための1つは、高い成長率の企業で働く、ということです。 就職・転職活動の際に、売上の成長率や給与の伸び率をみて会社を選べば、rを上回るgを実現することができるでしょう。

──会社にいる方はどうでしょうか?

 それには、2つの方法があります。労働時間を長くすることと、生産性を高くすることです。たとえば、皆さん、仕事のうえで「バリューベース」で行動することはありますでしょうか?

──バリューベースとはなんでしょうか?

 自分の行動を価値に置き換えて、最も価値が高まる行動を選択する、ということです。

 たとえば、顧客にプレゼンに行く場合、電車で30分、タクシーで15分かかります。大抵の方は電車を選びますね。コストから考えれば、もちろん、電車のほうが安いです。しかし、タクシーであれば、移動中に、事前の打ち合わせをすることができるかもしれませんし、余裕をもってプレゼンに臨むことができます。タクシーで移動するほうが、その価値は高いです。こうして時間単位の価値を高めていくことで、生産性は向上しますよね。

【3】自分という資産に投資すること


──3番目は、「自分という資産に投資する」ということでした

 これは、自分を資産に見立てて、自分自身に投資すること、つまり学び続けることです。最もリスクが低く、リターンが高いものだと思います。

 毎月の給料の10%は自己啓発にあてるとか、お金がなければ、必要な知識につしてネットでとことん調べてみるといったように"時間"を投資することで、自分を成長に導くことも可能です。

──格差はなくならない。でも、それを自分で克服することはできるわけですね。

 すべての人が平等になることはありえないですよね。でも、人と違うからおもしろいということだっていえると思うんです。

 まずは自分らしく生きること。
 ただ、どんな世の中になっても生き抜いていける準備はしておくこと。
 そのためには、必要なことを「知る」ことだと思うのです。
 さて、私たちは今後、どのように格差を解消していくのか。
 ピケティの本書は、それを私たちに問う本ではなかったかと思います。

(了)


マンガですぐわかる!ピケティと21世紀の資本論
格差の本質とこれからの私たちがやるべきこと
安部 徹也 著/ユウリ イラスト



安部徹也氏(あべてつや)
太陽神戸三井銀行勤務後、米国ビジネススクール留学を経て、現在ビジネス教育及び経営コンサルティングを主業とする株式会社 MBA Solution代表取締役。日本におけるMBA教育の普及を目指す一般社団法人日本MBA協会の代表理事も務める。ファイナンスも得意とする。
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