スキルアップ
2015年5月29日
「スクール・カースト」という子どもの闇社会
[連載] 人と比べない生き方――劣等感を力に変える処方箋【2】
文・和田 秀樹
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人と比べない教育システムの行き着くところは?


 前回の連載で私は、「他人と比べること自体は悪いことではなく、比べ方が問題だ」と述べましたが、実は日本の戦後教育の流れを見ると、その問題が非常に大きく影響していることがわかるのです。

 戦後の我が国を振り返ると、ちょうど高度成長期に入る1955年ぐらいから、競争による管理志向がきわめて強い時代に入ります。
 学校教育でも、他人と比べ合ったり競争したりするのが当たり前になり、受験競争が激化し、東大をはじめとする一流大学に進む学生の多い学校は優秀で、そうでない学校はランクが低いというように序列化を生んでいきました。

 学校内でも成績表を貼り出して、人と比べることで競争心を煽り、成績の良い学生はカッコ良くて、劣等生はバカにされるという文化が生まれたのもこのころです。
 人間にはもともと人と比べる心理、競争する心理がどこかにあるので、成績表を貼り出すことで、その心理をよけいに助長させるような教育システムであったことはおそらくたしかでしょう。

 ところが、1975年ぐらいになると、そのように人と比べたり競争したりすることが人間の心を歪めるというイデオロギーが非常に強くなり、ほとんどの学校で成績表を貼り出さなくなっていきました。

 さらには、「勉強ができる生徒を褒めて勉強ができない子をバカにするのが良くないとすれば、運動やスポーツにも同じことが言えるだろう」ということで、運動会の競技で順位を付けるのをやめたり、徒競走では差が出ないように手を繋いで一緒にゴールさせる(これは都市伝説だと言われることもありますが)といったことが行われるようになったのです。

 また、学習発表会(昔でいう学芸会)では、主役に選ばれなかった子どもがかわいそうだという理由で、主役のない劇や、みんなが主役になって全員に必ずセリフが与えられるといった劇が行われるようにもなりました。

 このように、人と比べない、競争しないといったやり方を押し付けることで、子どもたちが実際に人と比べたり競争したりすることがなくなったのかというと、表面的にはあまり目立たなくはなったものの、逆に、目に見えないところで人と比べたり競争したりする傾向が高まっていったのです。その競争心理が歪んだ形で現れたのが、「スクール・カースト」という学校内の闇の階級社会です。

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人と比べない生き方
劣等感を力に変える処方箋
和田秀樹 著



和田秀樹(わだひでき)
1960年大阪府生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。著書に『比べてわかる! フロイトとアドラーの心理学』『自分が自分でいられるコフート心理学入門』(以上、青春出版社)、『自分は自分 人は人』『感情的にならない本』(以上、新講社)など多数。