カルチャー
2015年6月4日
ヒートアイランド現象や雷など、知っておきたい夏の気象の科学
[連載] 暮らしを支える「熱」の科学【1】
文・梶川武信
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大気の熱と雷の関係


図1 落雷のしくみ ※クリックすると拡大

 大気の熱は、10億V(ボルト)の雷をつくります! 大気の動きは、高気圧と低気圧という気圧の差で生まれます。暖かい空気は冷たい空気より軽いので、温度の違う空気がぶつかると、暖かい空気はかならず上に動き、上昇気流になります。雷のできる積乱雲では、これが毎秒10mもの速度になっています。空気は膨張して温度が下がり、-20℃から-40℃程度になります。

 こうして、上昇気流の中では直径0.01mmほどの細かい氷の粒、すなわち雲が発生します。これが100万個ほど集まると、直径1mmの氷の粒になります。成長した氷の粒は重力によって落ち始め、途中から雨や雪になります。

 空気は電気を通さない絶縁物です。また、混じりけのない水も、電気を通さない絶縁物です。絶縁物では電気は動けないので、細かい氷の粒の表面に、プラスあるいはマイナスの電気をためやすい性質があります。1cmの厚さの空気の間に3万V以上の電圧がかかると絶縁が壊れ、電気が流れます。これが雲の中や雲と地表の間で起こると雷になります。

 このような高い電圧は、雲の中の上昇気流と、氷の粒の運動によってつくられます。雲の中では小さな氷の結晶は上昇し、一方、大きな粒に成長した氷塊は落下します。この2つの流れがすれ違うと、絶縁物を互いにこすり合わせたように摩擦力が働き、それによって電気がプラスとマイナスに分かれます。これが静電気(摩擦電気)です。

 上昇する小さな氷の表面はプラス側、落下する大きな氷塊の表面はマイナス側の電気をもっています。こうして、プラスとマイナスの電気が別々に集まった状態が積乱雲中につくりだされます。電圧は10億Vに達するといわれます。マイナス側に帯電した雲が地表に近づくと、地表にはプラスの電気が集まってきます。すると、先端がとがった金属や木などの高いところに、落雷しやすくなります。

ヒートアイランド現象ってなに?


図2 ヒートアイランド現象 ※クリックすると拡大

 人が多く住む町や、工場や高い建物が多い場所の気温が、1年中その周辺よりも高く、まるで発熱したヒーターのような状態になることをヒートアイランド(熱の島)現象といいます。周辺地域との温度の違いは、2℃から3℃です。この温度差は都市周辺の気象に影響し、夏には熱中症が増え、夜の不快指数が上がります。冷房による電力消費も増加します。冬は暖冬になって暖房費は減りますが、気候が不順になります。

 ヒートアイランド現象が起こる原因は、次の3つが考えられています。地面の利用の仕方、建物の表面、それに産業や暮らしの中からの廃熱です。

 アスファルトやコンクリートの道路は、熱を吸収して蓄えます。電磁波は海の波のように凹凸のある形が繰り返されて進んでいきます。波の山から次の波の山(または波の谷から次の谷)のピークの間の水平距離を波長といいます。波長が1秒間に何回進むかを表したのが周波数です。

 建物もコンクリートでつくられ密集しているので、風の力を弱めます。そのため、地表近くに熱い空気がたまりやすくなります。また、道路と同様に熱を吸収し蓄える効果ももちます。

 町を走る自動車の排気熱、工場からの廃熱、冷房などビルや家庭からの廃熱なども、影響の割合としては比較的小さいのですが、無視できません。

 まわりと3℃も違うと、湿度50%の空気では1m2で厚さ1mあたり約13gの浮力がつくりだされ、都市から熱い空気の上昇気流が発生します。そのため上空では空気の乱れが起こり、気象を不安定にさせる引き金となります。

 ヒートアイランド現象を減らすために、町の緑化、建物の表面の工夫、廃熱を減らす新しい技術などが求められています。

(了)
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暮らしを支える「熱」の科学
ヒートテックやチルド冷蔵、ヒートパイプを生んだ熱の技術を総まとめ!
梶川武信 著



【著者】梶川武信(かじかわ たけのぶ)
1942年、東京都生まれ。名古屋大学大学院工学研究科修了。工学博士。専門はエネルギー変換工学。通商産業省(現経済産業省)電子技術総合研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所)から湘南工科大学までの42年間、熱電発電など新発電技術の研究開発および大学教育に従事。現在は湘南工科大学名誉教授。著書に『「再生可能エネルギー」のキホン』(SBクリエイティブ)、『エネルギー工学入門』(裳華房)、『海洋エネルギー読本』(オーム社)、『熱電学総論』(S&T出版)など。