カルチャー
2015年6月30日
中国に負けないベトナムの「したたかさ」とは
[連載] 中国との付き合い方はベトナムに学べ【2】
文・中村繁夫
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"レアメタルハンター"として見てきたリアルな世界


中国向けレアメタルを供給する鉱山入口にて(ルワンダ)

 前回はベトナムがなぜ中国との付き合い方の先生であるかを説明した。
 では、どうすれば日本が、中国に負けないベトナムのようなしたたかさを身に付け、中国と賢い「大人の付き合い」ができるようになれるのだろうか。

 その第一の鍵となるものは、メディアにも出てこない一次情報を握ることである。
 私がこのように多少なりとも自信を持って言い切ることができるのは、私自身が"レアメタルハンター"として実地に一次情報の有用性を実感し続けてきたからに他ならない。

 現在でも1年の約半分は海外を飛び回る生活である。中国やベトナムはもちろん、ASEAN諸国、そしてもう一つのカテゴリーであるロシア、ウクライナ、カザフスタンなどの中央アジア各国に入り込むことも非常に多い。中国との付き合いは改革開放前に遡って、もうかれこれ40年になる。仕事で訪れたのは延べ102カ国になる。

 当時は日本人が本気で相手にしなかったレアメタルという商材を選んだおかげで、ときには文字通り密林に分け入り、砂漠を越え「お宝」を探し求めて世界を歩くという貴重な体験ができたのだ。

 しかし、そうした国々と付き合うのは生半可なことではなかった。ビジネスの話だけができたところで、そんなものは表現は悪いが糞の役にも立たない。

 多くの日本人は世界のビジネスに打って出て、「こんなはずではなかった」「なぜ常識が通じないんだ」と後悔したり憤慨したりしているが、私からすれば「浅い」のである。つまり、世界と付き合うときに仕事の話しかできないのであれば話にもならない。

 もちろん、私も最初は数々の失敗をしながら学んだのだが、中国に限らず世界と付き合うには、それぞれの国や地域の歴史・政治・文化の裏側を知ることが絶対に必要なのである。

 何より、表面的な綺麗事とは違って面白い。なぜ、その国や地域の人たちはそういう考え方や行動様式を持つに至ったのか、それぞれの国民性はどのように形成されていったのかという視点で「裏側」から相手を理解すると、それまで見えなかったものがたくさん見えてくる。

 たとえば、ものづくりのプロであればモノを見るときに、表面だけを見るようなことは絶対にしない。その内部構造がどうなっているのか、使われている部材の材質は何かを丹念に調べて、なぜそういったつくり方をしているのかまでを考えるものだ。

 それと同じことである。その国や国民を本当に知って付き合おうとするなら、メディアに流れるような表面的な情報だけを見て、知ったつもり理解したつもりになるのは愚の骨頂だと思ったほうがいい。

 事実、我われ日本人が知りえるニュースや新聞報道は間違っていることが多い。恣意的に事実を歪めた情報操作に踊らされている一面も少なくはない。自分自身で見聞きした一次情報から洞察することで真の姿が見えてくるのである。

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中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
1947年京都府生まれ。京都府立洛北高校卒業後、静岡大学農学部木材工業科に進学。大学院に進むが休学し、世界放浪の旅へ出かける。ヒッピーのような生活を続けながら、ヨーロッパ、ブラジル、アメリカなど30数カ国を放浪する。約3年の旅を終え、大学院に復学、修士課程を修了。旅を続ける中で、商社の仕事、レアメタルという商材に興味を覚え、繊維と化学品の専門商社、蝶理に27歳の新入社員として入社。約30年勤務し、そのほとんどをレアメタル関連部門でのレアメタル資源開発輸入の業務に従事する。蝶理の経営状況悪化により、55歳でいきなりのリストラ勧告。レアメタル事業をMBOで引き継ぐことを決意し、2003年、蝶理アドバンスト マテリアル ジャパンの社長に就任。翌年、MBOを実施し独立。アドバンスト マテリアル ジャパンの代表取締役社長に就任した。中国、ベトナムをはじめとするアジア各地で会社を設立し、ビジネスを幅広く展開。日本の「レアメタル王」として知られる。交渉を通じて数多くの失敗を経験するなかで、ベトナムの交渉術(対外戦略)が個人・ビジネス・国家レベルでいちばん日本人に参考になることを説く。ウェッジ等でアジアに関するコラムを数多く寄稿。著書に、『レアメタル・パニック』(光文社)、『レアメタル資源争奪戦』(日刊工業新聞社)、『2次会は出るな!』(フォレスト出版)などがある。