ビジネス
2015年9月24日
湯煙の町にロボットがやってきた!(2)~城崎温泉pepperプロジェクト~
[連載] 湯煙の町にロボットがやってきた!【2】
文・三津田治夫
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pepperのプログラム開発環境「pepper SDK」の画面

 スタンダードという意味でいま最もボトルネックになっているのが、ロボットを駆動するOSの問題だ。現在各社からさまざまなロボットが販売されているが、スタンダードのOSがまだ普及していない。パソコンでは現在WindowsとMacの2つでほぼスタンダードであるが、それがまだ確立していない、という状況だ。またハードウェアとしても故障率の高さなど、pepperの持つ課題もまだ多い。いつの時代にも最新の技術は未熟である。1990年代のPC黎明期がそうだった。ハードディスクが破損したりOSが動かなくなるなどはよくあることだった。それがいつしか、PCは社会に欠かせない道具になり、いまではスマートフォンに姿を変え、子供からお年寄りまでの万人が持つスタンダードの道具になった。

ロボットの未来、pepperの未来、人間の未来


 最新の技術を組み込んで作り上げたアンドロイドを舞台に上げ芝居を上演することは、予期せぬ出来事や課題との直面、解決を繰り返す作業である。これは「耐久レースだ」と、力石武信氏は語る。そうした状況に幾度も取り組んだ実績があるからこそ、城崎温泉pepperプロジェクトで新しいコンテンツを生み、pepperの新しい価値を発見するなど、新たな成果への期待は高い。その意味でも、現場でのコンテンツ提供およびバージョンッアップの繰り返しと同じ速度で、pepperというハードウェアの耐久性や運動能力、pepper OSを進化させていく必要がある。

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 pepperに心を持たせる一つの方法論として、ロボット演劇で培われた舞台演出の技法が使われることはとても興味深い。まさにpepperによる科学と芸術の出会いである。そしてまた、生まれたての技術が成長し、成熟していく過程のはじまりが、その出会いを起点にした、いま、である。

 pepperが成長し、成熟した未来は、決して遠くはない。pepperが街中にあふれかえり、人たちとコミュニケーションを取っている5年後の社会。5年後の2020年にこの記事を読み返した人は、どんな印象を受けるのだろうか。ちょうどこの年は、50年ぶりの、東京オリンピックの開催時期だ。

 つきあう相手がモニタ画面やキーパッドではなく、より人間に近いコミュニケーションが可能な「心を持つ機械」であれば、それはもはや機械ではない。pepperがロボット社会の起爆剤になり、より人間的な機械とのコミュニケーションを実現する。機械とのコミュニケーションにわくわくする目の前の未来を、楽しみに迎えたい。

(了)








Pepperプログラミング
基本動作からアプリの企画・演出まで
ソフトバンクロボティクス 村山 龍太郎 + 谷沢 智史、西村 一彦 著
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