カルチャー
2015年10月1日
ヨーロッパを覆う「イスラム化」という恐怖
[連載] 宗教消滅─資本主義は宗教と心中する─【5】
文・島田裕巳
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世界中で同時多発的に起きる「宗教」なき世界。ヨーロッパで見られる「世俗化」とその先にある「宗教離れ」。今回、指摘するのは、さらに今、ヨーロッパの国々が恐れている「イスラム化」という事態だ。日本人には想像もつかないヨーロッパの宗教事情とは? 「ポスト資本主義時代」の宗教を指し示す長期連載、5回目。


 フランスとドイツにおけるキリスト教の教会離れの現象について見てきたわけだが、それはこの二つの国にのみ言えることではなく、ヨーロッパ全体で起こっていることである。
 どの国においても、教会離れが進んでいる。それも相当な勢いで進行している。

 たとえば、イギリスの場合である。これは、2年ほど前のことになるが、朝日新聞の2013年10月1日付朝刊に、「消えゆく教会 欧州 信者減り進む転用」という見出しの記事が掲載された。それによれば、ヨーロッパでは、キリスト教の教会離れが進み、成り立たなくなった教会が出てきているが、英国国教会の場合も、1年に25の教会が閉鎖されているというのである。
 イギリスでは、国勢調査を行う際に、信仰についても尋ねているが、2011年の国勢調査において、「キリスト教徒」と答えた人の割合は59パーセント、6割がキリスト教徒としての自覚をもっている。だが、10年前の調査をみると、72パーセントであり、この10年のあいだに大幅に減少していることになる。そして、4人に1人が「無宗教」と答えているのである。

停滞する布教活動


 ここ最近のキリスト教の教会離れは、相当な勢いで進行していることになるが、これは今になって始まったことではない。すでに1960年代から目立ちはじめていた。それを知るために、「修道会の会員数の減少」に着目してみたい。

 日本にキリスト教を伝えたのは、イエズス会の創始者の一人であるフランシスコ・ザビエルである。そのイエズス会の場合、1961年には3万4687人の会員を抱えていた。これは、修道士の数と考えていい。
 それが、2007年には1万9216人に減少した。1961年と比較すると45パーセントの減少である。ほかの修道会についても言えることで、フランシスコ会では、2万6151が1万5256人と42パーセント減少し、サレジオ会でも2万545人が1万6389人と20パーセント減少した。ドミニコ会になると、9737人が6044人と、38パーセントも減少している(青山玄「『司祭年』を迎えて思うこと」『ヴァチカンの道』第21巻第2号)。

 キリスト教は、宣教の宗教である。イエス・キリストの教えは「福音」と呼ばれ、それを述べ伝えていくことがキリスト教徒のつとめであるとされる。その先頭に立ってきたのが、各修道会に所属する修道士である。彼らは宣教師として、いまだキリスト教が伝えられていない国々に派遣されてきた。
 しかも、キリスト教では、教えに殉じて亡くなる「殉教」が高く評価されてきた。カトリック教会では、殉教者は、「福者」や、さらには「聖者」と認定され、信徒たちの信仰の対象にもなっていく。
 そうした形態をとってきたカトリック教会において、修道士が大幅に減少していることは、宣教活動が停滞し、教会の勢力が衰退していくことを意味する。

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宗教消滅
資本主義は宗教と心中する
島田 裕巳 著



【著者】島田 裕巳(しまだ ひろみ)
現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長。学生時代に宗教学者の柳川啓一に師事し、とくに通過儀礼(イニシエーション)の観点から宗教現象を分析することに関心をもつ。大学在学中にヤマギシ会の運動に参加し、大学院に進学した後も、緑のふるさと運動にかかわる。大学院では、コミューン運動の研究を行い、医療と宗教との関係についても関心をもつ。日本女子大学では宗教学を教える。 1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに、『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。生まれ順による相性について解説した『相性が悪い!』(新潮新書)や『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、大きな話題になるとともに、タイトルがそのまま流行語になった。