カルチャー
2015年10月16日
若くても「腸年齢」が高ければ認知症予備軍
[連載] 認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい【2】
文・新谷弘実
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働き盛りの年代なのに腸年齢は高齢者、という人はめずらしくありません。そのため腸の状態と密接な関係があると考えられる認知症は、もはや高齢者だけの病気ではないのです。これは「若年性認知症」という病名が定着しつつあることからも明らかです。認知症だけでなく、腸はあらゆる病気の発生源といわれています。ですから日々の腸のケアが重要となってくるのです。このことについて、何十万例の人びとの腸を診てきた経験から詳しく解説していきます。


実年齢と腸年齢は必ずしも一致しない


 私が専門としている胃腸内視鏡外科では、内視鏡という器具を使って、開腹することなく胃や腸にできたポリープなどを取り除いていきます。
 じつは、この手法を編み出したのは私です。

 外科のレジデント(研修医)として渡米した5年後、かねてから内視鏡を使ってポリープ切除ができないかと考えていた、そのアイデアを、試行錯誤の末に技術として確立することに成功したのです。

 内視鏡は、グラスファイバーの先端に小さな特殊カメラがついた、細いチューブ状をしています。まずはこれで体内の様子を観察していくわけですが、これまで診てきた35万例近くの人々の胃腸は私に多くのことを語ってくれました。

 なかでも腸は雄弁です。ある意味、その方の性格から好み、生活のありようまで物語ってくれます。そこには医学書には記されていなかった事実もたくさんありました。
 患者さんたちの年齢も性別もさまざまで、腸の中の様子も十人十色だったのですが、とくに私が注目したのは、患者さんの実年齢と腸内の状態は、必ずしも一致しなかったことです。

高齢でも腸年齢が若ければ、認知症になりにくい


 実年齢と腸の状態が必ずしも一致しない? と不思議に思われる人は多いでしょう。一般的には高齢になるほど身体は老化し、内臓の状態も悪くなっていくというのが常識です。当然、腸の状態も高齢になるほどに悪くなっていくというのが自然の経過でしょう。ところが、その常識は腸には当てはまらないのです。

 私が診察した最高齢の方は105歳でした。人間の寿命は120歳が限界といわれていますから、その寿命に限りなく近い方だったわけですが、大腸内視鏡で観察して私は内心感嘆してしまいました。腸壁はやわらかく、きれいな色をした健康そのものの腸だったからです。他にも90歳を超える方は何人かいらっしゃいましたが、おしなべてどの方の腸もきれいでした。

 その反対のケースも数多く目にしてきました。実年齢は若いのに腸の中にはあちこちにポリープができていて、腸の働きがすっかり低下している方、このままいけば大腸ガンに進んでしまうことは確実と思われる腸の持ち主もたくさんいたのです。
 患者さんのカードを見ると年齢は30代と記入されているのに、腸内の状態があまりに悪くて驚いてしまったこともあります。

 そこからいえるのは、年齢の若さと腸の若さは比例しないということです。肉体的にはまだまだ若くても、その内部では確実に老化が進んでいる、腸の年齢がいっていることが往々にしてあるのです。
 しかも腸の中の様子は、自分では確認できません。白髪の増加や老眼の進行など、目に見えるかたちで老化のシグナルが現れるわけではないからです。

 腸の加齢は、見えないところで進行していきます。
 腸に負担をかける食事や生活のしかたを続けていると、どれほど若くても腸年齢は確実に上がっていきます。実年齢は30歳なのに、腸年齢は70歳ということもあって不思議ではないのです。

 腸の老化は脳の機能不全に直結し、そこからも認知症につながってしまいます。ですから、実年齢が若くとも腸年齢が高ければ、認知症と無縁とはいいきれないのです。

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認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい
新谷弘実 著



新谷 弘実(しんや・ひろみ)
1935年福岡県出身。医学博士。ベス・イスラエル病院名誉外科部長。米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科元教授。1960年順天堂大学医学部卒業後、1963年に渡米。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入技術を考案し、世界で初めて開腹手術をすることなく内視鏡による大腸ポリープ切除に成功。その技術によりガン発症リスクを大きく減少させ、医学界に大きく貢献する。日米で35万例以上の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ除去手術を行ったこの分野の世界的権威。著書にミリオンセラーになった『病気にならない生き方』シリーズ(サンマーク出版)、『胃腸は語る』(弘文堂)、監修に『免疫力が上がる!「腸」健康法』(三笠書房)など多数ある。