カルチャー
2015年10月22日
欧米型の食生活が「認知症」を近づける!
[連載] 認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい【4】
文・新谷弘実
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腸相がよければ、認知症だけでなく生活習慣病も遠ざけることができます。この腸相をよくするカギとなるのがユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」。しかし、いまの日本人の食生活は欧米型で、その恩恵を受けている人は少ないといえます。今回は理想とされる子どもの頃のきれいな腸相を取り戻すにはどうしたらいいのかをテーマに、腸相をよくする食材や、細胞を活発にさせるミトコンドリアについても解説していきます。


理想の日本食を摂っている家庭はほんのひと握り


 日本の食生活が、戦後の高度経済成長の時代に大きく欧米型の高タンパク・高脂肪食へ変わったことは、皆さんもご存じのとおりです。近年では、和食が文化として世界遺産に登録されたこともあり、日本食のよさが改めて見直されてきていますが、日常的な日本人の食生活はまだまだ欧米型です。

「マクガバン・レポート」が理想とした日本食は、「精白しない穀類を主食とした、季節の野菜、海藻、小さな魚介類」ですが、このような"日本型"の食生活をしているご家庭はどのくらいあるでしょうか? 本当にひと握りではないかと思います。

 このことを証明するかのように、ある時期から欧米型食生活にシフトした日本人の腸相は、私が見る限りでも悪化の一途をたどっています。

 アメリカ人の胃腸を診始めてから数年後、私はアメリカと日本を行き来しながら2つの国の人たちの胃相・腸相を診察してきましたが、きれいだった日本人の腸相は、食生活の変化と呼応するかのように悪化していったのです。

 色が汚く腸壁が厚く硬くなって、粘膜にひだが多発し、内腔も狭い。そのうえ、大腸の壁には憩室と呼ばれるポケット状のくぼみがあちこちにできていて、停滞した便が残っている...。これが典型的な悪い腸相です。

 このような腸相をしていると、排泄がスムーズにいかなくなり、便秘はもとより、排泄があっても憩室や粘膜ひだの間に停滞便が溜まりやすくなります。
 停滞した便は、硫化水素やスカトール、フェノール、アンモニアといった有毒ガスや活性酸素(フリーラジカル)を生じさせるため、腸粘膜の刺激や破壊によるポリープやガンの発生、大腸炎、憩室炎といった病気につながっていきます。

10年後の脳を決定づける現在の「腸」


 腸相が悪いと、悪影響が及ぶのは腸だけではありません。動脈硬化、高血圧、心臓病、糖尿病、肥満といった生活習慣病、さらには前立腺ガン、乳ガンなどの発症率も高めてしまいます。また、腸壁が硬く厚くなってひだが増えることで腸の中が敏感になり、ちょっとした刺激で緊張やけいれんを起こすようにもなります。

 お腹のあたりがいつも張っている感じがする、ガスがたくさん発生してお腹がゴロゴロしている、便秘や下痢を起こしやすい、過敏性腸症候群を起こしている...こうした不快な状態が続けばストレスにもなるでしょう。その腸からのストレスは神経を介して脳へも伝わり、脳自体のストレスにもなります。

 このように腸が不健康だと、生活習慣病が増えて、脳にもよくない影響を与え、二重にも三重にも認知症の危険因子を増やしてしまうといってよいのです。
 50歳くらいからすでに認知症の芽が出始めていることを考えたら、汚れた腸はその芽を確実に大きくしてしまうといえます。

 腸相を悪くする一番の要因は、肉の摂り過ぎです。肉食が多く、しかも食物繊維の量が少ない食生活をしていると、腸の中はどんどん汚れていきます。10年後の脳を守るためにも、認知症に近づいてしまうような食生活は改めたほうがよいのです。10年後の脳を決定づけるのはいまの腸といっても過言ではないのです。

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認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい
新谷弘実 著



新谷 弘実(しんや・ひろみ)
1935年福岡県出身。医学博士。ベス・イスラエル病院名誉外科部長。米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科元教授。1960年順天堂大学医学部卒業後、1963年に渡米。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入技術を考案し、世界で初めて開腹手術をすることなく内視鏡による大腸ポリープ切除に成功。その技術によりガン発症リスクを大きく減少させ、医学界に大きく貢献する。日米で35万例以上の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ除去手術を行ったこの分野の世界的権威。著書にミリオンセラーになった『病気にならない生き方』シリーズ(サンマーク出版)、『胃腸は語る』(弘文堂)、監修に『免疫力が上がる!「腸」健康法』(三笠書房)など多数ある。