カルチャー
2015年11月17日
専門外の薬に対して、あまりにも無知な日本の医者の実態
[連載] だから医者は薬を飲まない【3】
文・和田 秀樹
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総合的な診療ができない医者がめずらしくない日本では、いい医者に診てもらわなければ、薬の量が増える一方といっても過言ではありません。ところが、なかなかいい医者に巡り合うことができない人も、少なくないかもしれません。ただ、必要以上に薬を処方されても、本当に必要な薬だけを選んでもらうことはできます。それは、かかりつけの薬局をつくればいいからです。今回は安易に薬を出す医者の見分け方と、かかりつけ薬局をつくることのメリットについて解説します。


日本には「総合医」が少ない


 日本には、総合的な診療ができない医者が多いのは、前回までのコラムでもふれましたが、アメリカやイギリスなどでは、ジェネラル・プラクティショナーと言われる医者がいます。日本語に訳すと「総合医」ということになります。

 文字どおり総合的に診断できる医者のことですが、残念ながら日本にはジェネラル・プラクティショナーを育てる教育システムがほとんどありません。そのため、総合的な診療ができる医者が少ないのです。

 これは、このコラムの第1回でも述べたように、医学教育も医療も日本では専門分化型になっているからです。これでは自分の専門の科の医療については自信を持っている医者でも、違う科については不十分な知識しか持ち合わせていない、といったことになってしまいます。

 そのため、ハンドブックで治療法や薬の知識などを得なければならないことが多くなるのです。つまり、自分の専門以外の薬についても無知だということです。

 このような医者だと、患者さんが複数の病気を持っていて、いろんな種類の薬を服用していても、自分の専門外の薬に対する知識がないために、「飲み合わせが悪いので、こちらのほうを控えてもらうように担当の先生に伝えてください」といったアドバイスができません。実際、病名に合わせた薬だけを機械的に出して、それでよしとしている医者も少なくないのです。

文部科学省的な診察や治療が行われる大学病院


 ハンドブックがなければ、専門外の薬を出すことができない医者――。
 こういうタイプの医者は、特に大学病院の外来担当に多いかもしれません。朝から長蛇の列をなして外来で待っている患者さんたちを全員診なければならないので、一人ひとりにゆっくりと対応しているわけにはいかないからです。

 大学病院というのは、一般に高度な医療、最先端の医療を行うところとして認識されていますから、普通の総合病院よりも外来の診療技術も高いのではないかと思う人がいるかもしれません。ところが実際は、そうとは言えないところがあります。

 そもそも大学病院と一般の病院では、治療に対するスタンスも存在目的も違います。  当たり前のことですが、一般の病院は診療を行うことを目的としています。つまり、病気の患者さんを治すために存在しているわけです。

 ところが、大学病院というのは大学の医学部に属している機関ですから、基本的に教育研究機関という位置づけにあるのです。実際、大学病院の管轄は文部科学省になっています。ちなみに、大学病院以外の国立病院は厚生労働省の管轄で、県立病院や市民病院など自治体病院は総務省が管轄しています。

 教育研究機関であることからもわかるように、大学病院は一般の病院のように病気を治すことだけを目的としているわけではありません。教育、臨床、研究という3つの目的のために存在しているのです。

 臨床というのは、実際に患者さんに接して診察や治療を行うことです。ところが、大学病院は教育研究機関として、臨床教育、臨床研究、臨床試験を行う過程で患者さんの治療も行っているのです。要するに、患者さんの病気を治すことが第一目的ではなく、学術的研究や学生や若手医師の教育のために治療をしていると言えなくもないわけです。

 そういうこともあって、大学病院の外来を担当している医者のなかには、臨床が嫌いな人もいます。そういう人は一般の開業医と違って、病気が治るまで患者さんにちゃんと通院してもらおうという発想がありません。

「遠いところを大学病院まで朝早く来るのは大変でしょうから、かかりつけのお医者さんにこの薬を続けて出してほしいと言ってください」
 このように体裁の良いことを言って、患者さんを放ってしまう医者もいます。

 こうした現状を踏まえれば、患者さんも病院や医者を選ぶ、たしかな目を持つことが大事であると言えるでしょう。インターネットの時代ですから、病院の評判をインターネットで調べて比較することができます。その情報を鵜呑みにしろとは言いませんが、多数の患者さんの意見を参考にするのも悪くはないはずです。

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だから医者は薬を飲まない
和田秀樹 著



和田 秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。著書に『だから、これまでの健康・医学常識を疑え! 』(ワック)、『医者よ、老人を殺すな!』(KKロングセラーズ)、『老人性うつ』(PHP研究所)、『医学部の大罪』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『東大の大罪』(朝日新聞出版)など多数。