カルチャー
2015年12月10日
「統一教会」「幸福の科学」で進む信者の高齢化
[連載] 宗教消滅─資本主義は宗教と心中する─【15】
文・島田裕巳
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世界中で同時多的に進行する「宗教」の消滅。人類社会からの宗教の消滅を予言する本連載。日本の宗教の「今」はどうなっているのか? 今回は、「統一教会」「幸福の科学」を取り上げる。日本のバブルとともに、地方から出てきた若者を吸収した新宗教が、いま置かれた状況とは? 長期連載、15回目。


オウム裁判で目に焼きついた光景


 2014年1月のことである。
 オウム真理教の元信者で17年間逃亡生活を送っていた平田信の裁判が東京地裁で開かれていた。
 平田は、私の元自宅に爆発物を仕掛けた事件でも起訴されており、私はその裁判を傍聴していた。
 裁判が終わり、裁判所の外でテレビ局の取材を受けていたとき、門のところに多くの人たちが詰めかけてくる光景を見た。ほとんどが男性で、年齢は私の前後くらいだった。そのときの私は60歳だったので、50代、あるいは60代以上の男性が数十人集まってきていたことになる。

 すると、裁判所のなかから、勝訴という紙を掲げた男性が出てきた。集まってきた人々は、この男性を待ち受けていたのだ。
 その光景を見ていると、なかに、顔を知っている人間が混ざっているのに気づいた。それは、当時、世界基督教統一神霊協会、いわゆる統一教会の信者だった(現在、この教団は世界平和統一家族連合と改称している)。
 勝訴の紙を掲げた男性は、家族によって長い間拉致され、その賠償を求める民事訴訟に勝訴したということのようだった。

 裁判のことはともかく、私が強く印象づけられたのは、統一教会の信者の年齢がひどく偏っていることだった。

「親泣かせの原理運動」


 統一教会のことがはじめて日本で話題になったのは1960年代で、当時は、信者となった若者たちが家を出て、教団の「ホーム」と呼ばれる施設で暮らすようになってしまったことから、「親泣かせの原理運動」と呼ばれた。原理というのは、統一教会系の学生組織、原理研究会のことだった。

 統一教会は、韓国に生まれたキリスト教系の宗教団体だが、一方で、勝共連合という反共運動の組織を作っていた。まだ、冷戦が続いていた時代である。
 1960年代後半になると、これは世界的なことでもあったが、日本では政治運動、とくに学生運動が盛り上がりを見せ、原理運動は日本共産党の学生組織である民主青年同盟(民青)と激しく対立した。私の学生時代、校内で、民青の学生たちが原理運動の学生たちを襲い、乱闘騒ぎが起こるのを目撃したこともある。

 原理運動には、左翼の運動に対して不満を持つ右派の学生たちが集結した。裁判所の前に集まってきた統一教会の信者の年齢層から考えると、彼らはまさにその時代、1960年代の後半から70年代の前半に入信した世代に相当する。
 その場に、それよりも若い世代の姿をあまり見かけなかったのは、政治の季節が去り、反共運動としての原理運動の存在価値が薄れ、それによって信者になる人間が減少したことを示していた。

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宗教消滅
資本主義は宗教と心中する
島田 裕巳 著



【著者】島田 裕巳(しまだ ひろみ)
現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長。学生時代に宗教学者の柳川啓一に師事し、とくに通過儀礼(イニシエーション)の観点から宗教現象を分析することに関心をもつ。大学在学中にヤマギシ会の運動に参加し、大学院に進学した後も、緑のふるさと運動にかかわる。大学院では、コミューン運動の研究を行い、医療と宗教との関係についても関心をもつ。日本女子大学では宗教学を教える。 1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに、『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。生まれ順による相性について解説した『相性が悪い!』(新潮新書)や『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、大きな話題になるとともに、タイトルがそのまま流行語になった。