カルチャー
2015年12月17日
創価学会でさえ退潮の兆しが見えている
[連載] 宗教消滅─資本主義は宗教と心中する─【16】
文・島田裕巳
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世界中で同時多的に進行する「宗教」の消滅。人類社会からの宗教の消滅を予言する本連載。今回は、「創価学会」を取り上げる。戦後の集団就職のときから、信者を増やし、政治に進出するまでに成長した進行宗教。彼らもまた、資本主義経済の影響を受けているのか。長期連載、16回目。


『ALWAYS 三丁目の夕日』で描かれた集団就職


 2005年に公開された『ALWAYS 三丁目の夕日』という映画はヒットし、2作の続編も作られた。

 これは西岸良平のマンガを原作としたもので、昭和30年代の東京を舞台にしていた。映画の象徴となる東京タワーのすぐ下に下町が広がっているというのは、実際の東京の地理には反しているものの、高度経済成長がはじまった時代に対するノスタルジーをかきたてる作品になっていたことが、ヒットの原因だった。

 この映画の主人公、星野六子は青森から集団就職してきた若者として想定され、映画の冒頭は彼女がはじめて上野駅に降り立つ場面になっていた。
 集団就職がいつはじまったかについては必ずしもはっきりしないが、1954年頃からそのための専用列車が運行されるようになる。それは75年まで続いたとされるから、その期間は21年間にわたった。高度経済成長は50年代半ばにはじまり73年のオイル・ショックで転換点を迎えたとされるので、集団就職列車はまさに高度経済成長の象徴であったことになる。

 この集団就職の時代に大幅に勢力を拡大したのが日蓮系の新宗教であり、その代表が、創価学会、立正佼成会、霊友会であった。こうした教団は、現世利益の実現を掲げて多くの会員を獲得することに成功する。それによって、それぞれの教団は巨大な組織に発展していったのである。

創価学会が勢力を伸ばした理由


 なぜ、日蓮系新宗教の巨大化がこの時代に起こったかについては、すでに説明した。高度経済成長は産業構造の転換を伴い、地方から都市への大規模な労働力の移動という事態を生んだ。その波に乗って都会へ出てきた人間のうち、十分な学歴のない、高卒や中卒の人間たちを吸収したのが日蓮系新宗教であり、とりわけ創価学会だったのである。
 したがって、『ALWAYS 三丁目の夕日』の主人公も、自動車の修理工場で働くなか、必ずや創価学会の会員による折伏の対象になっていたはずである。まして、彼女の生活していたのは、創価学会がもっとも勢力を伸ばした下町である。
 だが、映画には、創価学会のような宗教団体はまったく登場しないし、その影さえ見えなかった。

 調査があるわけではないので、はっきりしたことは言えないが、当時集団就職してきた若者たちは、かなりの数創価学会の信者になったらしい。私の知り合いにもそうした人間がいる。都会に人間関係のネットワークを持たない人間たちには、創価学会の与えてくれるネットワークは魅力だった。それによって、慣れない都会のなかで生活の基盤を築くことができたからである。

 創価学会のなかで、もっとも強力なのは、「婦人部」である。創価学会には、性別年齢別に4つの組織があり、上の世代は壮年部と婦人部に、下の世代は男子部と女子部に分かれている。婦人部は、既婚者と35歳以上の未婚者で構成されている。

 婦人部はとくに結束が堅く、地域での活動の中心を担っている。そして、選挙のときに、学会員以外の人間に公明党の議員などに投票を依頼する活動をもっとも熱心にやるのも、この婦人部の会員たちだった。その様子は、テレビ東京の池上彰による選挙特番で紹介されたことがある。
 婦人部の中心が集団就職してきた世代であり、選挙の際には、彼女たちがもっとも多くの票を稼ぎ出す。彼女たちは、池田大作名誉会長が元気で、活発に活動していた時代に、折伏や聖教新聞の拡販にも動いた世代であり、「池田先生のために」という意識が強い。池田名誉会長の方も、その点は十分にわきまえていて、つねづね婦人部の活動を高く評価してきた。

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宗教消滅
資本主義は宗教と心中する
島田 裕巳 著



【著者】島田 裕巳(しまだ ひろみ)
現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長。学生時代に宗教学者の柳川啓一に師事し、とくに通過儀礼(イニシエーション)の観点から宗教現象を分析することに関心をもつ。大学在学中にヤマギシ会の運動に参加し、大学院に進学した後も、緑のふるさと運動にかかわる。大学院では、コミューン運動の研究を行い、医療と宗教との関係についても関心をもつ。日本女子大学では宗教学を教える。 1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに、『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。生まれ順による相性について解説した『相性が悪い!』(新潮新書)や『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、大きな話題になるとともに、タイトルがそのまま流行語になった。