カルチャー
2016年2月5日
野村克也氏が危惧「セ・リーグ全員40代監督」
[連載] 名将の条件――監督受難時代に必要な資質【1】
聞き手・SBCr Online編集部
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今年もプロ野球開幕に向け、2月のキャンプが近づいた。昨季との大きな違いは、セ・リーグが3人の新人監督を迎えることだ。高橋由伸(巨人)、金本知憲(阪神)、アレックス・ラミレス(横浜)である。これでセ・リーグは全員が40代の監督となり、急速な世代交代が進んだことになる。だが、「本当のプロ野球監督がいなくなった!」と球界の智将・野村克也氏は今の状況を危惧する。野村氏は「セ弱パ強」のプロ野球、昨年11月のプレミア12準決勝敗退、そしてセ・リーグ全員40代監督誕生という状況を受け、監督の資質を憂い、『名将の条件』(SB新書)を近く上梓する(2月6日発売)。今、プロ野球監督に求められる資質とは何かを、野村氏に問うた。


野球の本質を忘れていないか? 結果論だらけの最近のプロ野球


本当の監督がいなくなったと球界を危惧する野村克也氏(撮影:SBクリエイティブ)

 最近のプロ野球を見ていて、とくに感じることは、
「とにかく勝てばいい」
「面白ければそれでいい」
 という風潮が、以前にも増して顕著であるように思えて仕方がない。

 もちろん、プロ野球をビジネスとしてとらえた場合、一人でも多くのお客さんに球場に足を運んでもらうために、エンターテインメント性を高めることは必要なことかもしれない。しかし、それだけではプロ野球の本当の面白さを知ることができないのも、また事実である。

 さらに言えば、野球中継がテレビの地上波からほとんどと言ってよいほどなくなってしまった。昨季はセ・リーグが、シーズン終盤まで激しい首位争いを繰り広げ、またクライマックスシリーズも盛り上がっていたにもかかわらず、試合結果をニュースのスポーツコーナーで流すだけなんていうことは、もはや珍しくなくなった。

 問題はそれだけにとどまらない。現場上がりの解説者にしても、そのほとんどが結果論だけに終始し、また自分がそれまで在籍していた球団に気を使っているからなのか、本音でモノが言えなくなってしまっている。これは嘆かわしいを通り越して、もはや不安にしか思えない。

 野球の評論、解説とは本来、1球ごとに生じる攻撃する側と守る側のせめぎ合いや心理戦、監督の采配の妙にポイントを当てて説明しなければならない。たんにホームランやヒットを打ったことや、三振を奪ったことなど、目に見えるものだけを追い求め、勝った負けたと一喜一憂しているようでは、外野スタンドで応援しているファンとなんら変わりがない。

 この程度の解説しかできない人間が、いざ監督やコーチなどユニフォームを着て現場に戻ったらどうなるのか。奥深い野球の追求など、到底あり得ないだろう。

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名将の条件
監督受難時代に必要な資質
野村 克也 著



野村 克也(のむらかつや)
1935年生まれ。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。現役27年間で、歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王など、その強打で数々の記録を打ち立て、不動の正捕手として南海の黄金時代を支えた。「ささやき戦術」や投手のクイックモーションの導入など、駆け引きに優れ工夫を欠かさない野球スタイルは、現在まで語り継がれる。70年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、四球団で監督を歴任。他球団で挫折した選手を見事に立ち直らせる手腕は「野村再生工場」と呼ばれる。 ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。インタビュー等でみせる独特の発言は「ボヤキ節」と呼ばれ、 その言葉は「ノムラ語録」として野球ファン以外にも親しまれている。