カルチャー
2016年3月11日
【プロが教える野球観戦術】エラーを「成功プレー」で上書きするのも"見えないファインプレー"
[連載] プロ野球 見えないファインプレー論【3】
聞き手・SBCr Online編集部
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2016年プロ野球開幕まであと2週間となった。華麗なプレーや記憶に残るプレー、記憶に残る数字だけが野球のすべてではない! 走塁や打撃、守備などの一見平凡そうなプレーにも勝因は潜んでいる――。野球解説者があまり語らない、こうした「見えないファインプレー」について、プロで長年二塁手として活躍し、現在は解説者・評論家およびWBSCプレミア12の守備・走塁コーチなどを務め、『プロ野球 見えないファインプレー論』(SB新書)を刊行した仁志敏久氏に、プロのプレーの奥深さを語っていただいた。


野球には「守り」なんてない


ルーキーイヤーでサヨナラエラーをしたエピソードを語る仁志氏(撮影:SBクリエイティブ)

 野球というのは、「守備」と「攻撃」の形がまったく異なるという極めて珍しいスポーツです。ラグビーもサッカーも、バレーボールもバスケットボールも、アイスホッケーもテニスも、〈守り〉と〈攻め〉の形は基本的には同じですが、野球は守備と攻撃ではやることがまるで違います。打球をさばいて送球する技術と、ピッチャーの球をバットで弾き返す技術は、まったく次元が異なります。この2つの技術を要求されるのが野球です。

 言い換えれば、この両方が出来なければ野球でレギュラーにはなれません。守備が天才的でも、打撃が1割台では試合に出られませんし、逆にホームランを何本も打てても、守備が全然ダメというのでは、DH制のあるリーグでは重宝されても、それ以外では難しい。  まるで性格の異なる2つのスポーツを会得するようなものですから、その意味では野球というのは大変なスポーツだと言えるでしょう。

 もっと言ってしまうと、冒頭で「守備」と「攻撃」と記してはいますが、「守っている」という表現が、実は私はあまり好きではありません。実際、よく考えればわかりますが、野球というのは守っている選手が誰一人としていないスポーツなのです。

「守り」あるいは「守備」と言いながら、別に受動的に守り一辺倒になっているわけではありません。むしろ、ピッチャーはバッターに向かって「攻めている」という表現さえします。なかでも最速162㎞/hのストレートを投げる日本ハムの大谷翔平投手のピッチングなどは、まさに攻めている代表例と言えるでしょう。

 また、内野手も外野手も、アウトを取るためにアグレッシブに打球に飛びつく。ピッチャーもバッターも「攻撃」の形や種類が違うだけで、手段を変えてお互いに攻め合っている、いわば全員が攻めているスポーツだと言えます。ルール上、守備側になるピッチャーや野手は、何をしても点が入らないと決められていて、打っている側だけが点を入れることが出来ることから、「守備」と「攻撃」という言葉で便宜的に分けられているだけです。

 極端に言えば、守備の側もゲッツーやトリプルプレーを決めたら点が入るというようなルールにすれば、実は野球がどちらも攻撃的であるという実態が浮き彫りになってくるのではないでしょうか。荒唐無稽に思われるかもしれませんが、野球というスポーツはそんな見方も出来ます。
 ひょっとしたら、そちらのほうが、よりアグレッシブで面白いスポーツになるのではないか...? 野球を突き詰めて考えるとき、そんなことが頭に浮かんだりもします。

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プロ野球 見えないファインプレー論
仁志敏久 著



仁志 敏久(にしとしひさ)
1971年茨城県生まれ。常総学院高校では準優勝1回を含む甲子園3度出場。早稲田大学では主将としてチームを牽引し、主に遊撃手として活躍。日本生命を経て、1995年にドラフト2位で読売ジャイアンツに入団。1996年に新人王をはじめ、ゴールデングラブ賞を4回獲得するなど、二塁手レギュラーとして活躍。2007年に横浜ベイスターズ(現、DeNAベイスターズ)へ移籍。2010年に米独立リーグ・ランカスターへ移籍、同年引退。現在は、野球評論家として「すぽると」をはじめテレビ、ラジオでの解説、雑誌等での寄稿を行う。また、指導者としてジュニア世代育成、講演会などを積極的に行う。2014年8月にU12全日本代表監督に就任。2015年7月には第1回WBSCプレミア12の日本代表内野守備・走塁コーチに就任。著書に『プロフェッショナル』(祥伝社)、『反骨』(双葉社)など多数。