カルチャー
2016年4月22日
なぜ「残業禁止」が労働生産性を向上させるのか
[連載] 自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう【7】
ガラパゴス的に進化した「日本型人事システム」に疑問をもつ
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少子化、老老介護、孤独死、待機児童問題など、数多くの難題を抱え「課題先進国」となってしまった日本。こうした混迷の時代でも、自分の半径5mの世界から変えていくことが結局は早く世界を変えることにつながる。日本の未来と、今後の私たちの働き方について、出口治明 氏と島澤諭 氏に語っていただく好評連載7回目!(出典:『自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議』)


「同一労働・同一賃金」はなぜ必要か


出口 先生は、生産性を上げるためにはどうすればいいと思いますか?

島澤 私は、所得から上げたほうがいいと思います。

出口 僕も同感ですが、所得を上げるための源泉はどこにあるかといえば生産性の向上にしかない。今の日本では、生産性とはあまり関係がない賃金の支払い方が多いような気がしています。

島澤 生産性を上げなくても給料がたくさんもらえる人は、わざわざ生産性を上げようとはしませんからね。年功序列は若いときに搾り取られた給料以上の働いた分を年をとったら取り返す仕組みですから、年功序列が維持される限り、必然年をとれば働かなくなります。

出口 やはり「同一労働・同一賃金」の体系にしないとダメだと思います。よく「年功序列がいい」という人がいますが、長期的に見ればもたないはずです。
 例えば、僕と大学生がラーメン屋でアルバイトをしていたとします。僕のほうが歳をとっているのでおそらく動きは鈍いと思いますが、「出口さんは67歳だから時間給は高めにしましょう」となると、大学生は「俺のほうがテキパキ働いているのに」と怒って辞めてしまうのではないでしょうか。
 でも同一労働・同一賃金が実現すれば、このような理不尽なことはまかり通らなくなります。生産性に応じた給与体系になれば、頑張れば賃金が上りますから、やりがいも出てきます。ところが日本では、年功序列がまかり通っている。いくら頑張っても、例えば5年経たないと昇進しないとなれば、誰も頑張らなくなる。だからいつまで経っても生産性が上がらないのだと思います。

島澤 企業はなぜ時代に合わなくなった年功序列を今もなお続けているのでしょうか?

出口 人口が増加し、経済が成長し続けるキャッチアップ型の社会では、成長に合わせて従業員の数も増やしていかなければなりません。仮に経済が毎年7%成長するとしたら、お客さんも毎年7%ぐらいは増えるわけですから、退職者などを踏まえると、従業員の数も毎年1割程度増やしていかなければならない。しかし、これは企業にとっては大変な圧力になりますから、一括採用で効率よく新卒の人材を確保するようになったのです。
 でも毎年7%の成長が続けば、10年で経済規模はほぼ2倍になります。単純計算すると倍の従業員が必要になるので、当然ながら人手不足に陥ります。そうなると無理に退職させる必要もないので、自然と終身雇用になります。

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自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議
出口治明・島澤諭 著



出口治明(でぐち・はるあき)
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長などを経て、2006年に日本生命保険相互会社を退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを経て、現在、ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEO。

島澤諭(しまさわ・まなぶ)
東京大学経済学部卒業。1994年、経済企画庁(現内閣府)入庁。2001年内閣府退官。秋田大学教育文化学部准教授等を経て、2015年4月より中部圏社会経済研究所経済分析・応用チームリーダー。この間、内閣府経済社会総合研究所客員研究員、財務省財務総合政策研究所客員研究員等を兼任。専門は世代間格差の政治経済学。